第15回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
OpenNFVの2年間で見えてきた課題 解決に向けたHPEの3つの挑戦
日本ヒューレット・パッカード 通信・メディアソリューションズ統括本部 OSS担当営業部長 迫田健氏

NFVエコシステムをマルチベンダーで実現するOpenNFVプログラムを2年前に発表して以降、HPEは50以上のPoCに協力するなど、NFV商用化を支援する取り組みを進めてきた。HPEはこの経験を活かして、仮想化基盤やSDNコントローラ、オーケストレーターなどを強化し、NFV/SDNの導入による通信事業者の収益向上に貢献していきたいと考えている。

 ちょうど2年前、このコンファレンスで、HPがNFVに本格的に挑戦していくというお話をさせていただきました。今日はこの2年間の取り組みを通じて見えてきたことと、2015年11月の分社化で企業や通信事業者向けのビジネスを担うことになった私どもヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)が、これまでの経験を踏まえ、通信事業者のNFV/SDNの導入にどのように貢献できるかを話したいと思います。

 当社は、NFV/SDN分野ではTSIやOPNFV、OpenStack、OpenDaylightなどでチェアを務めるなどリーダーシップも取りながら標準化を支援しています。これらの標準を踏まえてNFVに必要な機能を規定したオープンなアーキテクチャを提唱、「OpenNFVプログラム」としてAPIやSDKを提供し、世界5カ所に実証環境を設けて通信事業者やパートナーであるネットワークベンダーの皆様に御利用いただけるようにするなどの活動を2年にわたって進めてきました。

 主だったものだけで約50、小規模なものを含めると100程度のPoCのプロジェクトに参加し、現在も30〜40程が進行しています。このうちNTTやKDDI研究所とのプロジェクトなど15のPoCがETSIに登録されています。

 これらのPoCを通じて、専用アプライアンスと同等の機能が汎用サーバー上で実現できるかなどの点は検証されてきています。同時に商用化にはいくつかの課題があることも見えてきました。

 まず、大きな課題として残っているものに信頼性や性能などが挙げられます。次に、OPEX削減の有力な手段として期待されている運用自動化も、既存設備との混在環境で実現しようとすると、大量のワークフローの策定や、膨大なプロビジョニング作業が必要となり、通信事業者にとって大きな負担となります。さらに、NFV/SDNをマルチベンダーで実現しようとすると、相互接続性を含めて全体の性能をどう保証していくかも大きな課題です。

 こうした課題の解決に向けて、HPEは大きく3つの挑戦を進めています。

 1つがNFVのインフラストラクチャとしての信頼性を向上させることで、その具体策としてHPEでは次世代ネットワークの構築を想定した通信事業者向けクラウド基盤「Helion OpenStack Carrier Grade」の提供を開始しました。この製品は企業やデータセンターで用いられているOpenStackの実装環境を通信事業者のNFVのネットワークで利用できるよう拡張したもので、信頼性やスループットの向上などが図られています。また半年毎に変更されるOpenStackの仕様をHPEが検証し1年程度のスパンで製品に反映することで、新しい技術標準を安心してご利用いただける環境を提供します。

 2つ目がSDN基盤の強化です。PoCではNuage Networksと協力して異なるデータセンターのリソースをSDNコントローラで管理する検証を行っており、この機能はすでに製品に取り込まれています。また2015年夏に弊社と経営統合したConteXtreamの「ContexNet」という製品を用いて、オーバレイでのサービスチェイニングも実現しています。

 最後がサービスオーケストレーションの実現です。多くの通信事業者がNFV/SDNの導入を機に既存ネットワークを含めたサービス開発の迅速化や保守・運用の効率化を実現したいと考えていますが、従来の環境でこれを実現するには非常に多くのワークフローの策定やプロビジョニングが必要です。そこでHPEでは新たに「SERVICE Orchestrator」というコンポーネントを設けNFVオーケストレーターと既存のOSSを一体的に管理することでこの課題の解決を図ろうとしています。これにより既存のワークフローを実現するだけでなく、将来的にはクラウドを含む他のサービスを実装ループに取り込み、コンポーネント化することで、通信事業者が自らのサービスを自由に組み立てられる環境を実現していきたいと考えています。

(文責・編集部)

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