第16回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
SD-WANが実現する 次世代閉域網サービス
日本アルカテル・ルーセント IP/Opticalネットワーク SDNソリューションマネージャー 毛利 元三氏

SD-WANは通信事業者の既存サービスと競合ではなく共存可能な技術だ。脅威はOTTプレイヤーがSD-WANを活用して閉域網サービスに乗り出してきている点にある。海外では先手を打ってSD-WANの導入に動く通信事業者も出てきた。ノキアはデータセンターと広域網を統合的に扱えるニュアージュのソリューションを通じ、新時代の閉域網サービスの実現を支援していく。

 今ご紹介いただきましたように私はもともとアルカテル・ルーセントの人間なのですが、先日ノキアが正式に株式を100%取得いたしましたので、今日はノキアとしてSD-WANの取り組みを紹介させていただきます。

 アルカテル・ルーセントでは100%子会社のニュアージュネットワークス(Nuage Networks)を通じてSDN製品を展開し市場で一定のポジションを得ており、統合後もさらにこの分野に力をいれていこうとしています。

 最近、このSDNをWAN環境に適用するSD-WANが注目されるようになっていますが、ニュアージュはこの分野でも高い評価を得ています。SD-WANは企業ユーザーの目線から語られることが多いのですが、ここでは通信事業者のビジネスにSD-WANがどのような意味を持つのかを考えていきたいと思います。

 SD-WAN技術は今、黎明期を過ぎ、その価値が認知されはじめた段階に差し掛かっているといえるでしょう。実際、私どものお客様であるキャリアの法人営業担当の方などから勉強会を開いて欲しいといった要望をいただくことが多くなっています。その中でよく聞かれるのが、「SD-WANは通信事業者にとって減収要因になるのではないか」ということです。この技術が既存のVPNサービスなどを置き換えるものであれば、こうした懸念を持たれるは自然なことだと思います。

 これを考える上でのポイントは、SD-WANが物理回線とは切り離された存在だということです。法人ユーザーが安心してSD-WANを使うには安定した回線が不可欠です。我々は、SD-WANは既存サービスと競合ではなく共存していくものだと見ています。

 では、SD-WANを導入することで具体的には何が変わることになるのでしょうか。エンドユーザーにとっての最も大きな変化は、ネットワークの構成やセキュリティの設定を自ら幅広く行うことができることです。例えば、複数のキャリアと契約して時間帯毎に安価な回線に切り替えて使うといったことを機械任せで容易に行えるようになります。キャリアの閉域網とインターネットVPNを用途毎に使い分けるといったことも実現できます。これによってテレビ会議のトラフィックをインターネットVPN側に流して従来10Mbpsで契約していた閉域網を5Mbpsに減速するといった形で、副次的に通信コストを削減することも可能になります。

 これは通信事業者にとっては必ずしも望ましいことではない訳ですが、それ以上に注意しなければいけないのは、SD-WANを活用して閉域網サービスを提供するOTT事業者が登場してきていることです。何もしなければ通信制御などの高度サービスの収益をすべてOTTに持っていかれる可能性がある。そこで海外では通信事業者が自らSD-WANを活用した閉域網サービスを立ち上げ、ユーザーを囲い込んでしまおうとする動きが広がってきています。

 通信事業差者にとっても、閉域網サービスにSD-WANを導入することで、顧客のサービス向上が図れるだけでなく、ネットワーク設計、設定、導入などに関わるコストを大幅に削減できる利点が生じます。

 私どもが展開しているニュアージュのSD-WANは、VXLANオーバレイ技術により、インターネットVPNや広域イーサネットなどの既存のネットワーク上に仮想的なプラベートネットワークを構築するもので、GUIを用いてユーザーがネットワークを自由に構成できます。加えてキャリアサービスでの利用を想定した細かな機能を実装していること、データセンターと広域網の双方に対応していることが大きな特徴です。これらを活用して通信事業者は、付加価値の高いサービスを実現することができます。ノキアは、ニュアージュのソリューションを通じて、差別化できるSD-WANサービスの実現に貢献して参ります。

(文責・編集部)

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