第16回次世代ネットワーク&サービスコンファレンス 講演抄録
SDN/NFVの運用・管理で KDDI総研が打ち出した2つの解
KDDI総合研究所 執行役員 森田 逸郎氏

SDN/NFVは迅速なサービス提供や運用コストの低減を実現する手段として期待を集めている。他方、SDN/NFV環境では運用・障害対策で従来とは異なる対応が求められることになる。KDDI総研は、国内外のキャリア、ベンダーと協力しSDN/NFV環境における新たな運用・管理技術の開発を進め、ユーザーセントリックなネットワークを実現していく。

 本日はSDN/NFVの導入でネットワークがどう変わっていくかをテーマに話をしていきたいと思います。

 KDDIでは5Gのビジョンとしてユーザーセントリック(ユーザー中心)を掲げ、お客様にわくわくする体験を提供できるネットワーク、産業・社会基盤、安心・安全を支えられる高い能力・信頼性を持つネットワークを実現していきたいと考えています。

 これを可能にするには、(1)ダイナミックな役割分担、例えばエッジコンピューティングの導入、(2)能力の拡大(例えば超高速化、低遅延化)、(3)要求条件に応じた最適なネットワークの提供、という3つの面でネットワークを進化させる必要があると我々は見ています。本日のテーマであるSDN/NFVは3番目の手段となるもので、これにより5Gユーザー、パートナーの多様な要求に柔軟に対応できるネットワークの構築が可能になります。

 CAPEX/OPEXの削減、運用管理の柔軟性の向上、サービス展開の迅速化などの手段としてもSDN/NFVには、強い期待が寄せられています。

 例えばAmazonなどのOTT事業者は新サービスを数秒で導入できるようになっていますが、現在の通信事業者のネットワークではこれが数週間、数カ月かかってしまいます。SDN/NFVはこの問題を解決する手立てとなります。今後、通信事業者のネットワーク構築において仮想化は不可欠の要素になっていくでしょう。

 とはいえ、SDN/NFV環境には、運用・管理上の課題もまだ多く残っています。これを解決していくためにKDDI総研では、2つの技術開発に取り組んできました。

 その1つが、マルチベンダー環境におけるSDN/NFVの運用自動化です。

 SDN/NFVは複数のベンダーのネットワーク機器やソフトウェアを組み合わせて構築されるため、保守・管理においても従来とは異なる手法が必要となります。

 そこでKDDI総研では、自らオーケストレーターを開発し、マルチベンダー環境における障害時の自動復旧手順をモデル化し、2015年にベンダー各社と共同でNFV基盤の運用自動化PoCを実施しました。我々はこのモデルやオーケストレーターとの通信手順をTMForumやETSIに提案、国際標準化が進められています。

 NFV環境では、障害対策の考え方も大きく変わります。現在のネットワークでは障害が起きると、まず原因を特定し対策を講じます。これに対しNFV環境では、障害が起きた仮想サーバーを別の所に移してしまうようなことが簡単にできるので、まず直してしまい、その後で原因を特定する形に変わります。このプロジェクトの名称「Recover First, Resolve Next」はこれを表しています。

 もう1つのテーマが、SDN/NFV環境におけるリアルタイム監視機能の実現です。SDN/NFV環境にそのまま従来の網監視の手法を導入すると、アラームなどのデータ量が膨大になり、リアルタイムで監視を行うことが難くなってしまいます。

 そこで、KDDI総研では管理機能を分散型にすることでデータ処理時間を10分の1に短縮する技術を開発し、これをバルセロナで開かれたMWC2016で公開しました。

 このシステムではAI(機械学習)を用いて、故障が発生する前に予兆、通常とは異なるふるまいを検知して対処を行う「予防保全」も実現しており、9割程度の制度で異常を検知できることを確認しています。

 こうした仕組みは、安定したサービスを提供する上で非常に重要になってくるでしょう。

 我々はSDN/NFVは最適なネットワークを提供していく上で不可欠の技術だと考えており、さらに研究開発を進め、ユーザーセントリックなネットワークを実現して参ります。

(文責・編集部)

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