武田 社外や部門外へのアピールと社員のモチベーションアップには有効です。しかし、数値だけを追い求めていくと、やがて点数の競い合いに終始し、本質を見失う恐れがあります。つまり、意識的あるいは無意識のうちにCSポイントが上がるような設問やフレーム設計にどうしても陥りがちになってしまうからです。これでは、顧客満足どころか自己満足になってしまいます。また、CSランキングNo.1の企業はまだしも、2位以下のところはデータにあまり意味がなくなってしまいます。しかも、たとえ1位であっても問題を数多く内包しているわけです。そこで、顧客に本当の意味で満足してもらうためには、調査手法を180度転換し、最初から「不満足度」を引き出し、要素分析と追跡調査を行い、ここから解決策を見出していくことが必要です。
――では、不満足度調査の手法とは。
武田 まず前提として、この調査が一番向かないのは、組織がタテ型でお役所的というか社員が常にトップや上司の顔色を見ながら仕事をしているような企業。権威主義、減点主義で、悪いデータが出ると当事者が責任を問われるようなところは、実施しても無駄です。また、不満足度調査の場合、顧客離反や失注(注文を失うこと)、敗戦(ライバルとの競争に負けてしまったケース)の原因究明のための追跡調査にも力点を置くことから、パーミッションの取れた顧客リストが揃っている、あるいは揃える必要があります。さて具体的な実践ですが、通常、12ページ平均のアンケート用紙(A4サイズ)を定期的に郵送して調査します。回収率は30〜35%で、しかもフリーアンサーの記入率は有効回答の40%以上です。なぜこのように確度の高い調査ができるかと言えば、顧客から不満の要素を引き出すノウハウを設問や調査フレームの随所に盛り込んでいるからです。定量調査は5段階ないし7段階で行いますが、「非常に不満」「不満」を設問の左側または上方に置き、CS調査の記入とは逆になります。また、定性調査用の設問にしても、まずマイナス要素から入るようなフォーマットにしてあるなど、不満足項目を先にすることで、顧客の真意を引き出すようにしています。と言っても、不満足度調査と銘打って実施するわけではなく、顧客に対してはあくまでサービス向上のため率直な意見を伺うというスタンスなのですが、重要なのは、企業として不満足にフォーカスするのか、それともあくまでCSポイントを求めるのかという違いです。不満足に焦点を当てれば、自ずと設問や調査フレーム自体が従来型のCS調査とは異なったものになってくるわけです。さらに、不満足度調査の基本は同じですが、業種・業態や1社ごとに問題点が異なるだけに、私どもではご依頼いただいた企業の状況や顧客分析を行い、1社ごとにフレーム設計しています。
――不満足度指数が出てくるのですか。
武田 数値としてはっきり出ます。この推移を見ることは社内・組織にとって非常に重要です。例えば、100人の顧客のうち80人が非常に不満としていた項目が、次回の調査で30人に減っていたとすれば、成果がおおいに上がったことになります。しかしながら、不満足度指数は外部に公表するような数値ではありませんから、目標とするところはあくまで顧客満足度を引き上げていくことになります。その意味では現行のCS調査と変わらないわけですが、根本的に異なるのは、目的とそのための手法です。不満足度調査から企業を本質的に変えていこうとする取り組みと、いわば“為にする”CS調査とでは数値の重みが違います。