私どもの部門では、企業がビッグデータと呼ばれるさまざまな情報を分析・活用し、ビジネスを最適化するための基盤の構築、ならびにこれをサポートするサービスを提供しています。今日は、こうした情報分析が企業のマーケティングにどう生かせるのかについて話をして参ります。
最近、消費の主導権が企業から消費者の側に移っていると言われています。インターネットの普及によって企業よりも消費者の方が情報を持つようになり、ソーシャルメディアで消費者が自ら世論を形成し、トレンドを作っていくことができるようになってきています。こうした中で、企業は消費者の考えを正確に捉える必要に迫られています。
では、具体的にどのような形で企業はビッグデータを活用しているのでしょうか。まず、ソーシャルメディアのデータの活用例を見ていきましょう。
あるカー用品メーカーは、ソーシャルメディア上での自社及び他社商品に対する反応を分析し、キャンペーン期間中に次々と対抗策を打ち出しています。またある化粧品メーカーは、消費者のつぶやきを分析し、競合に対する弱点を把握して、カウンセリング、さらには提案力の強化に取り組んでいます。
市場の反応をリアルタイムでモニターし、打った策とのマッチング具合を検証、修正していく「モデファイドマーケティング」という手法が、多くの会社に取り入れられつつあります。
これはマスに対するマーケティング手法ですが、次に個々のお客様に深くコミットしていく私どものnba(next best action)というサービスについて話をしたいと思います。
nbaは、お客様1人1人のニーズを深く理解して、それぞれに最適な対応を行うことで、販売促進や顧客の離反防止につなげようとするものです。
これを実現するには、コールセンターに入ってくる顧客の声、店頭やWebプロモーションの反応など、マルチチャネルから得られる顧客情報を統合し、すべての角度から把握できるプラットフォームを構築する必要があります。その上で、顧客が次にどこへいくのか、何を買おうとするのか、どんな情報をどんなタイミングで欲するかなどを、個人単位で予測するアルゴリズムが必要です。
これをマーケティングとひもづけると、顧客がどのチャネルで企業にアクセスしても、その人にとって最も快適な対応を行うことが可能になります。これにより、企業とお客様との間に安定した関係が構築され、ライフタイムバリューが最大化されることが期待できます。
このソリューションのキーとなるのは、顧客クラスタリングを顧客の行動パターン別に非常に細かく行う「アクションクラスタリング」という手法です。この作業は人手では不可能なのですべてアルゴリズムに委ねます。このクラスタリングに添って最適なオファーを最適なタイミングで提示するのです。
nbaを最初に導入したのは米国のベストバイという小売企業ですが、ある顧客群(クラスター)における利益率が3カ月で2倍になるという成果を得ています。現在ではさまざまな業種の企業に採用されており、キャンペーンの反応率の向上や売上の増加、販売コストの削減などに、成果をあげています。
このnbaの活用を、通信事業者のビジネスにおきかえて考えますと(1)コールセンターへの問い合わせやWebサイトの閲覧履歴などから、顧客の本当のニーズを把握し、最適なタイミングでコールセンターからオファーを行うことでサービスの拡販効果をあげたり、(2)事前に顧客の解約徴候を捉えて防止のための提案を行う、といったことが可能になります。重要なのは、これが単なるビジョンではなく、すでにアジア、北米、欧州の通信事業者にnbaを実装するプロジェクトが進行していることです。
IBMは最新のマーケティングサービスの提供を通じて、日本の通信事業者のビジネスに貢献して参ります。
(文責・編集部)