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CTインタビュー

センター需要拡大の今だからこそ
専門性と品質の“深度”が問われる

園山 征夫氏
ベルシステム24 代表取締役会長兼社長

園山 征夫氏Photo

景気低迷のなか、2ケタの増収増益を続けるベルシステム24。
成長要因を園山征夫会長兼社長は「業務請負型から市場創出型への脱皮が成否の分かれ目。
強まるソリューション要求をどこまでトータルサポートできるかが、ますます問われている。
当社はマーケティング・ノウハウを最大の武器にして、この命題に応える」と言い切る。
独自のナレッジ化による業務プロセス革新で、
収益力向上と新たなサポートサービス開発を同時に推進する、同社の取り組みを聞いた。

  今中間期(2001年11月期)決算を発表されましたが、売上高、利益ともに2ケタ伸長を維持し、業績は好調ですね。

園山 当社が主力としているCRMソリューションビジネスは、コンタクトセンターのマネジメントを中心に拡大を続けています。また、アウトバウンドのリサーチ・セールスプロモーション業務に関しても、参議院議員選挙の電話・出口調査や、通信事業分野での「マイライン」サービス関連が加わり、ソリューションサービスとの相乗効果が出ました。この結果、当中間期の業績は、売上高295億円(対前年同期比17.3%増)、経常利益47億円(同23.5%増)を上げることができました。通期業績につきましても、売上高600億円(同12.2%増)、経常利益95億円(同13.7%増)と過去最高値の更新を見込んでいます。

  売り上げをクライアント業種別で見ると、どのように推移しているのでしょうか。

園山 業種全般にわたり伸びていますが、特に目立つのは金融と医薬・医療分野です。金融と言っても銀行、生損保、カード、証券と幅広いですが、共通しているのは顧客の維持と獲得をいかに図るかということで、マーケティングサポートの要求がますます高まっています。銀行ではリテール顧客の囲い込み、また生損保、カード会社も外資系などとの競合激化から既存顧客の囲い込みとブランドスイッチの重要手段として、コンタクトセンターのサポートが不可欠になっているのです。クライアント様上位300社で見ると、金融分野売り上げは通期で131億円、構成比21.8%と見込んでいます。
 医薬・医療は非常に専門性の高い分野ですが、当社は10数年前から取り組んでいます。医薬だけでなく最近は医療機関へのサポート業務が増えています。売り上げは通期で26億円、構成比4.3%を見込んでおりますが、毎年着実に伸びています。
 一方、通信分野は通期見込みで175億円、構成比29.2%を占め、主力分野に変わりはありませんが、相対的にウエイトは減っていく見通しです。

強まるソリューションサポート要求
コンサル要員の社内育成で課題に応える

  金融と医薬・医療のサポートでは何が訴求ポイントになっているのですか。

園山 一口で言うとソリューション提案がより重要になってきたということです。サポート業務の一部分を切り出して請け負う形から、コンサルティングから入りプランニング、システム運用までカバーするトータルサポートの要求が強まっています。国内でコールセンター、CRMの導入がいち早く進んだ金融分野ではこの傾向が顕著です。医薬・医療も同様で、元々新薬の臨床試験におけるプロセスの中に、製薬メーカーと医療現場の間に入る第三者機関として当社のサポートが組み込まれたのを契機に、ビジネス機会が拡大してきたものです。当社では毎年、薬学部卒の人材を定期採用している他、数学など理工学部出身の人材も確保しデータ解析まで全て行うなど、専門ニーズに対応しています。  ソリューションによるトータルサポートの傾向は金融、医薬・医療に限らず全分野に広がっています。違いはそのレベルの差だけで、当社でもマーケティングやトータルサポートの案件が次第に増えています。

  コンサルティングとなると専門スタッフが必要だと思いますが、御社では人材育成と強化をどのように進めているのですか。

園山 基本的に最も重要視している点は2つあります。1つは、新しいことにチャレンジする力をどう身に付けるか。そして会社は、社員が自ら育ち、ビジネスを創出するチャンスの場(機会)を与えるということです。この姿勢はコミュニケータまで含めて全社員に一様です。例えば、金融ではファイナンシャル・プランナーが求められていることから、コミュニケータ向けのFP養成コースを設けたり、マーケティングデータの解析力を高めるため、社内データを教材に実地に即したマーケティング研修を実施するなど、社員が自主的に受講できる機会を多く設けています。
 特にコンサルティング力の育成では“場数を踏む”ことが大事です。素養のありそうな人材を対象に経験を積ませる手段として、クライアント様のプロジェクトが編成される際に新人を組み込み、先輩社員とクライアント様のやりとりから体験的に学ばせ、レベルアップを図ったりしています。このようにして自社の中にもかなりのコンサルティングスタッフが育ってきました。現在、コンサルティング室には数十名が在籍し、ネットワーク系、コンタクトセンター構築系など機能別に専門化しています。

独自のナレッジ体系化で
クオリティとパフォーマンスを両立

  専門化など品質向上の一方で、パフォーマンスの追求も必要です。また、応対スキルなどの品質均一化も永遠のテーマですが、御社ではこれをどのように両立させているのでしょうか。

園山 クオリティとパフォーマンスをリンクさせるためのQPS(Quality Performance Standards)活動を3カ年計画で進めています。当期はその2年目として、全社標準のKPI(Key Performance Index)を定め、クオリティの全社的なレベルアップを図るとともに、専門家の育成に注力する、標準化と深化を同時併行で行っています。
 また、「知」の体系化と実践運用に取り組んでいます。ナレッジデータベースとしては、独自の営業支援システム「PPCサイクルプラン」と、コミュニケータを含む全社員の人材データベース「HAK(Human Assets Knowledge)DB」を中心に、独自のナレッジ体系化の確立を図っています。

  コールセンターからマルチコンタクトセンターへの進化がトレンドになり、電話だけでなくWeb系の比重が高まっていますが、アウトソーサーとしての対応は。

園山 当然ながら、Web、Eメールなどのコンタクトチャネルにはいち早く対応しています。ただし、受け側としては電話を含め常に全てのチャネルを用意しておく必要があります。コンタクトチャネルの増減に一定のルールがあるわけではなく、また良し悪しもありません。あくまで、クライアント様の商品特性や販促のやり方によって比重が変わるものです。総体としてeの部分が増えるのは必然の成り行きでしょう。

  一方で、センターの地方分散化も進んでいます。御社も積極的なようですが。

園山 センターの進出にあたっては、どこのロケーションに分散すれば当社としてベストなサービスを提供できるかが大前提で、加えて優遇措置などの行政サポートがあればなお有り難いですが、この点は第一義ではありません。地方拠点設置で念頭に置くのは、1年以内にどのくらいの稼働率になるか、少なくともミニマムな稼働率を維持できるか、また、適した人材が継続的に雇用できるかです。全国的なリロケーションの一環として昨年8月に「旭川ソリューション・アシュアランス・ターミナル」を新設、今年7月には松江に当社最大規模となるコンタクトセンターを開設の運びですが、いずれもクライアント様と当社の双方がメリットを得られるような最適化を図っています。

向こう5年で売り上げ倍増
マス展開より個別ニーズが深化

  市場全体で見ると、中期的にどのように展望されていますか。

園山 アウトソーシングビジネスは機能別に、@事務処理、Aシステム開発・物流、B経営・マーケティングに大きく3分できますが、Bがメインフィールドで、当社では“マーケティングサポート”と呼称しています。テレマーケティング及び従来のテレマ会社もここに包含されると思います。
 まず当社の場合から言いますと、中期的には毎年2ケタ伸長し、向こう5年で売上高がほぼ倍になると見込んでいます。その根拠は、マス的展開より個別対応のニーズが深化すると見ているからです。従来からの部分的な業務請負型はボリュームゾーンとしてあるわけですが、中期ビジョンとしては、そこから脱皮したところが成長を維持できる。既存市場でマスの取り合いをしていても意味がありません。市場創出型ヘシフトしていく企業姿勢が問われます。

  インハウス化の動きや、Web時代に伴って大手ASPなど新たな競合相手も出現しそうですが。

園山 インとアウトの兼ね合いの問題は経済状況、企業の考え方などにより、これからも常に変化します。しかし、マーケティングサポートの需要が左右されるかと言うと、私はそう思っていません。国内でこの分野のアウトソーシング比率はまだ10〜15%程度で、圧倒的にインハウスでしょう。一方、米国では30%強に達していると見ています。この観点からも伸びる余地が大きいと言えます。また、競合は増えるのが当たり前で、何を切り口にして戦うか、特色ある差別化ポイントが評価の分かれ目です。

  御社は何を差別化ポイントにして勝ち抜くのですか。

園山 マーケティング・ノウハウが最大の武器です。当社は中期的な事業コンセプトを「Dialogue-based-marketing」とし、新たに「Creating Value through Dialogue」をコーポレートスローガンに定めました。双方向の会話を通じて価値を創造する、という意味ですが、マーケティング系の新たなサポート商品の開発に一段と力を入れます。マーケティングというと統計的で定量的なデータに着目しがちですが、私は、対話に含まれる人間的な要素をサポートサービスをどう組み込めるかが、次世代型マーケティングの決め手になるような気がしてなりません。ITツールでもマンパワーでもよいのですが、人間の心理面をマーケティングサポートに活かす仕組みを目下研究しているところです。

(聞き手・鈴木 信之)


園山 征夫  (そのやま ゆきお)
ベルシステム24 代表取締役会長兼社長

1944年1月1日、島根県生まれ
67年3月、慶應義塾大学経済学部卒
73年9月、国際ロータリー財団奨学生として、
米ニューメキシコ大学経営大学院へ留学

<職 歴>

1967年4月、三和銀行入行
エンジニアリング会社などを経て
84年8月、コンピューターサービス(現CSK)入社
86年11月、ベルシステム24 専務取締役に就任
87年8月、同社 代表取締役社長に就任
2001年3月、代表取締役会長兼社長


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