4月から社内カンパニー制度を再編されましたが、その狙いと背景を教えて下さい。
坪井 コミュニケーションのあり方が、BtoB、BtoCのいずれにおいても多様化し、それに伴いユーザー企業のニーズも複雑化しています。具体的には、より“スピード重視”の対応が求められているのです。そこで、CTstageビジネスのコアプロセスを別カンパニーとして独立させ、今まで以上に小回りのきく経営モデルを確立することでその期待に応えることを狙いとしています。
従来から社内カンパニー制度を敷かれていましたが、大きく変わったのはどのような点ですか。
坪井 まず、システムソリューションカンパニー(SSC)から、特に注力すべき業種として金融ソリューション・カンパニー(FSC)を独立しました。さらに社内カンパニーとは別の組織として、各分野に特化したベンチャー・カンパニーが3社あったのですが、そこに我々のマルチメディアメッセージングカンパニー(MMC)とブロードバンドメディアカンパニー(BMC)を新設。生産部門は、全部門にまたがって関係するアフィエリートカンパニーとして生産サービスカンパニー(MSC)という形で発足させました。
MMCの組織の概要と新体制での販売戦略を具体的に説明してください。
坪井 MMCは、「CTstage」の企画部門と開発・SE部門がネットワークシステムカンパニー(NSC)から独立したものです。人員は、企画(マーケティング)担当が約10名、開発部隊が40名、SEが50名の計100名のベンチャー・カンパニーとして発足しました。SEは、コンサルティング・ソリューション・パートナー支援の3つの担当に分けています。販売面では、営業部門を切り分けており、NSCとSSC、FSCがそれを担当し、MMCのSEと共同でユーザーに直接対応します。
従来は、NSCで営業から開発まですべての業務を行っていたのですが、これでSSCやFSCにもCTstageを訴求してもらうことができます。CTstageは、もともとクロスインダストリーな製品で、ユーザーの業種は多岐に渡っています。そのイメージを高めるためにも、社内カンパニー制度をフル活用する方針です。言いかえれば、社内カンパニーをひとつのパートナー企業と考えることでチャネルを拡大することができると考えています。
「CTstage 4i for .NET」で
大規模市場へ本格参入
CTstageは、すでに国内のUnPBX製品では絶対的な強さを誇っています。そのポイントは。
坪井 CTstageは、マーケティングの機軸を常にブランド力の強化に置いています。そのために、マーケット・ニーズを機能面に反映したバージョンアップを繰り返してきました。一見するとコンポーネントの提供に徹しているような印象はあるかもしれませんが、ソリューションを提供するための機能強化を重ねているのです。
例えば、当初ユニファイドメッセージングを中核としたオフィスCTI製品として売り出したものを、市場の要求に応えてコールセンター機能を強化し、現在はWebコンタクト対応や音声認識までカバーしています。通信事業者向けのソリューションに関しても、単なるボイスメール・サーバーではなく、ボイスポータルやPHSを利用したモバイル・ソリューションの提供といったように、付加価値の訴求に力を入れていきました。
その一方で、基盤となるアーキテクチャは発売以来まったく手を加えていません。早い段階で(パートナー向けに)APIを公開したように、ミドルウエアとしての認識を強固に持っていたことが成功を後押ししたと考えています。これによって、先ほど申し上げたような付加価値の高いソリューション提供を可能としたのです。
確かに、バージョン2でコールセンター向けのACD機能強化やアウトバウンド機能を搭載し、バージョン3では音声認識、IP、さらにWeb対応といったように常に次世代のキーワードを具現化してきたような印象が強いですね。では、次フェーズの強化ポイントは……。
坪井 CTstageは、この6年弱で100席以下の中小規模コールセンターでの認知度はトップクラスに成長し、同時にUnPBXという新しい市場を切り開いたと捉えています。現在、最も大きなニーズはサイズアップで、それに応えるために新バージョン「CTstage 4i for .NET」を7月から出荷開始します。
新バージョンの機能を具体的に教えて下さい。
坪井 まず、IPベースで電話を完全に制御する“ソフトスイッチ”の実現です。これによって、従来100席強が限界だった回線数が、1サーバーで300席、複数サーバーを組み合わせれば数千席規模のコールセンターもサポートできます。同時に、1000端末レベルでのユニファイドメッセージングをコアとした一般オフィスのコミュニケーション・サーバー(IP-PBX)や数万回線のキャリア向けIPインフラとしても訴求可能です。IPのプロトコルには、次世代標準に目されているSIP(Session Initiation Protocol)、IPv6も採用、PCだけでなく家電製品やカーナビゲーション・システム、自動販売機などの端末も将来的には連携可能です。
不変のアーキテクチャでオープン性を訴求
カスタマイズ性・TCO削減をアピール
CTstageの成功は、機能面でマーケット・ニーズに応えただけでなく、市場のサイズに適応したオーバー・スペックではない点が評価されたこともある、と考えられます。現在、国内のコールセンターは100席以下が大半なのが実状と思われますが……。
坪井 昨年来、企業のIT投資が抑制されていますが、それは中堅・中小企業ほど顕著な傾向として表れています。一方で投資額が大きい大規模センターほど設立や機能拡張の必然性が高く、景気に左右されていません。CTstageもそのニーズに応える必要があると考えています。
また、センターのあり方にしても“集中か分散か”というのは永遠のテーマです。プラットフォームを提供するベンダーとしては、いずれのシステムも構築できる製品を用意しなければビジネスチャンスを捉えることはできません。IP化を推進することで、分散したマルチサイト・センターも集中したメガ・センターもサポートすることができます。
大規模対応によって、競合関係も変化してきますね。
坪井 従来、CTstageはユーザーもコンペティターも明確なターゲットを据えていませんでした。しかし、大規模センターのプラットフォームとして訴求することで(競合として)外資系PBXベンダーが視野に入ってきたことは事実です。
競合相手に対する優位性をどの点に置かれていますか。
坪井 IP化や大規模対応といっても、基盤となるアーキテクチャは一切手を加えていません。つまり、既存のアプリケーション資産はそのまま活かすことができる。言いかえれば、アプリケーション開発の容易さとユーザーレベルでのカスタマイズが可能で、ソリューション化が短期、安価に構築できることと、メンテナンス・コストが低減できることが最大のアドバンテージになると考えています。
付加価値を訴求しやすい環境を提供
アライアンス・プログラムを体系化
CTstageは、パートナー・プログラムを重視している点も大きな特徴だと思います。新カンパニーの設立によるパートナー戦略に変更は生じるのですか。
坪井 現在、約120社の販売パートナーに協力していただいています。この販売パートナー・プログラムに大きな変更はありません。
しかし、ソリューションのフレームワークをより体系化するために、「CTstage Frameware」というアライアンス・プログラムを新たに発足しました。これは、各パートナー企業をサーバー装置・ネットワーク・端末・ビジネスソリューション・サービス・ソフトウエア・ネットワーク機器の7階層に分けることでソリューション化のための選択肢を明確化することを狙いとしています。
連携する製品の分野を体系化することで、SIなどのディストリビュータがソリューション化しやすい環境を整えるということですね。
坪井 これまで2800セットを販売していますが、台数ベースでは社内カンパニー、つまり直販よりもチャネル販売の方が大きい。その意味では、まさに“パートナーに育ててもらった製品”です。この体制を維持・発展するためにパートナー各社がソリューションに付加価値を加えやすい仕組みをつくることは我々の義務と捉えています。
新製品とより強固になったパートナー支援制度で新市場の開拓に臨むということですね。では、新カンパニーの目標を具体的に教えて下さい。
坪井 ブロードバンドやモバイル・インターネットの普及で、「いつでも、どこでもアクセスできる」という環境の構築は多くの企業で急務となっています。MMCは、完全IP対応によってそれを実現し、カンパニー・ビジョンである“ブロードバンド・ユビキタス時代のコミュニケーション・モデルの構築”を具現化する方針です。当然ですが、ブランドの価値を高めるためにも売上げ増は至上ミッションです。初年度はパッケージベースで1000セット、110億円を目標に据えます。
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