――損害保険業界は、規制緩和による自由化や外資系企業の進出など、ここ数年、大きな変動にさらされています。市場環境をどのように捉えられていますか。
栗沢 最も大きな構成比を占める自動車関連の市場については、すでに成熟化していて、さほど大きな成長は見込めない状態です。また規制緩和によって、従来は“横並び”だった保険商品の価格体系が崩壊し、商品内容による差別化や価格競争が激しさを増しています。結果、1件当たりの保険料収入は下落していますが、各社の独自性を打ち出した商品やサービスの提供によって、お客様にとっては選択肢の幅が広がり、当社を含めた損保各社はそのニーズをいかに的確に捉えるか、ということを重要視していると考えています。
――今後の顧客戦略を具体的に教えて下さい。
栗沢 顧客ニーズをはじめとしたCSを的確に捉えるには、まずはお客様とのインタフェースを強化する必要があります。これまでは、支店・支社・損害サービスセンター・代理店などコンタクト・ポイントが多く、対応レベルにバラつきがあったことは否めませんでした。そこで、コンタクトセンター機能を大幅に強化することで業務の標準化に取り組む方針を打ち出しました。
ロケーション選定から人事制度策定まで
2年がかりの新センター建設計画
――御社は昨年秋に、約30億円を投じて秋田県に大規模コンタクトセンター「CRファクトリー」を設置することを発表しました。同センターの経営戦略上の役割を具体的に教えて下さい。
栗沢 (役割を)大きく分類すると、今後着手する販売網構造改革、業務プロセス改革、チャネル戦略、マーケティング戦略の中核と位置付けています。例えば販売チャネルについては、これまで通り、全国に4万店以上ある代理店が主体となることは変わりません。しかし規制緩和もあって、生保各社、証券会社や銀行の窓口でも損保商品を販売できるようになっています。さらに、先ほど申し上げたように商品体系が多様化・複雑化しており、改定や見直しの頻度も多い。そうなると、ますますお客様への商品説明やアフターフォローのレベルにチャネルごとのバラつきが生じかねないという危惧があります。
そこで、一般の問い合わせや事故受付の窓口をコンタクトセンターに集中化することが対応のスピードや業務品質の標準化につながると判断しました。言いかえれば、支店・支社や代理店は“営業”をはじめとした対面でしかできない業務に特化し、アフターフォローはコンタクトセンターにナビゲーションするという分業が可能となる、ということです。
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