仕事は、(1)重要ですぐやらなくてはいけない、(2)重要だがいつでもいい(あまり急がない)、(3)重要ではないがすぐやらなくてはいけない、(4)重要ではないしすぐやらなくてもいい、の4象限で捉えることができます。このうち、SVとしてまずやるべきは(2)でしょう。ここが理解できないSVが実に多いのです。目の前の仕事をいかにさばくかにしか1日の時間を使えない、(2)の重要性は分かっているが、限られた時間帯の中にどう組み込んでいったらよいか分からない、よしんばその時間を取ったとしても今度は何をどう考えたらよいかが分からない・・・。また、おぼろげながら改善のポイントは分かっていたとしても具体的に進めていくには困難が伴うし、時に孤独になるかもしれない。ここをあえて突き進んで行くのか、行かないのかSV自身が迷っていることが多いのです。しなくても日々の業務は終わっていくわけですから。
舟橋 そうです。とくにオペレータから昇格してきたばかりのSVは、とかく今までの業務を捨てられず、つい自分の得意なところをやってしまいがちです。自らが専門職から管理職に脱皮できないのです。そこで研修が必要になるわけです。1日単位のマネジメントでは今日をつつがなく終えることばかりに目が行っているので、中長期的な視点が持てません。そういう教育も訓練もされていないので当然なのですが、当社のSV研修でよく行うのは、3カ月単位の自己計画を立てさせることです。1年は長くても3カ月であれば具体化しやすく、その自己課題を1つずつ改善していく方策をいっしょに考えていくわけです。これを積み重ねていくとSVは着実に成長します。自分のやるべきことが明確化でき、逆にやらないことを決めることができると気づくのです。
――SVのキャリアパスはどう考えたらいいのでしょう。雇用形態が多様でコールセンターごとにSVの位置づけもさまざま、評価のの尺度もまちまちといった状況ですが。
舟橋 本来は正社員であることが理想です。あるいは、本人の希望と意欲があれば正社員になれるという登用の道筋を示すべきです。何故なら、SVであればなおさらコールセンターの仕事を愛するというより、その会社の商品・サービスや風土を愛して仕事をしてもらわなくてはいけないはずなのですから。たしかにコールセンターによって雇用形態や運用マネジメントは多種多様なのは事実ですが、私はたとえ雇用形態などが違っていたとしても、あくまで能力で処遇されるべきだと考えています。センター長などマネージャーがSVを評価する視点も同様でしょう。一方、SV自身も「私は特殊な仕事をしている」と思い込んではいけません。自分から“柵”を作らないことです。コールセンターではなく他のセクションでも通用するレベル、スキルを身に付けるにはどうすればよいかを考えて仕事をしていった方が良いと考えます。この自覚があれば、仮に営業企画セクションに異動になったとしても、管理職であることに変わりなく、動かすスタッフがオペレータではなくなるだけの話ですから。
あくまで能力で処遇すべき
パートSVが正社員を率いても不思議なし
――雇用形態は企業サイドの意向というだけでなく、雇用されるSVサイドのライフスタイルや就業に対する考え方も影響しますね。
舟橋 ですから、あくまでSV本人の意思がある場合に能力で処遇すべきと言っているのです。私は常々コールセンターが将来の企業の雇用形態を先取りした職場環境だと思っています。正社員、契約社員、パートタイマーなどいろいろな雇用形態のスタッフがいっしょに働いて同じ目標に向かって力を結集している職場は、マネジメントシステム自体が先進的で、これは10年後、20年後に一般企業でも普通になっているのではないかと。さらに言えば、コールセンターにはシステム・人事・運営という、いわば会社経営の基本が凝縮されており、マネジメントノウハウを早い段階で得られる場所だと思います。それだけ若いスタッフや意欲のある人材にはむしろチャンスを掴みやすいと言えるのではないでしょうか。SVも雇用形態に捉われることなく、能力と本人の意思次第で正当に評価され、職能・職制がうまく機能することが望ましいと考えます。パートのSVが正社員のオペレータを動かすコールセンターがあってもなんら不思議ではないのですよ。