舟橋 当然ながら業務のプロでないといけません。これは電話のプロという意味ではなく、業務のなかに電話応対の能力も含まれているということで、なにも“電話センターの特殊な人”ではないということです。ここがまず大事な点です。ただし、電話に携わる業務である以上、その応対スキルが高く、トラブルに対しても業務知識とヒューマンスキルで収められなくてはなりません。もう1つは良い耳を持っていること。その会社のポリシーをしっかり把握し、それを踏まえたコールモニタリングと的確な指導ができるかどうかです。そして、会社と現場のはざ間に立つ場面も多いので、孤独にも耐えられる人でなくてはなりません。こう言えば言うほど、普通の管理職に求められる資質となんら変わらないことが分かるでしょう。
――SVの仕事や役割はどう捉えたらいいのでしょうか。
舟橋 管理職全般の指標として私がよく用いているのは4対4対2の仕事の割り振り。つまり、「業務遂行・管理」を4、「教育・指導」を4、そして「実務」例えばプロフィット部門であれば「販売・営業」を2の比率を目安に仕事をするのがベターということです。これはコールセンターのSVでも同じです。業務遂行・管理で言えば、SVの仕事はセンター長の掲げたビジョンに則して現場のルールを作りメンバーに守らせることですが、実はこれが大変なのです。一番判りやすいのは出退勤管理でしょう。時間のルールを自ら作り合理的な方法でオペレータに守らせることができるか否かでマネジメント力が判ります。また、教育・指導は「評価」とは違います。SVはオペレータの電話応対を「良い」「悪い」と言う人ではなく、プロセス全体でみてあげることができなくてはいけません。全て良いことはまずないわけで、良いところは褒め、悪いところは的確にアドバイスしてスキルアップに導く、ある意味“世話好き”な能力が必要です。とくに、雇用形態が多様なコールセンターではプロセス全体をみる力がメンバーを納得させるベースになります。そして実務は電話およびEメール応対そのもので、オペレータはここが100%です。もちろんSVも実務を十分にこなす能力が必要ですが、仕事の割り振りとしては2の比率に押さえ、業務遂行・管理と教育・指導にウエイトを置くべきだということです。
――とはいえ、コールセンター現場ではSVの業務が輻輳し、ともすれば“何でも屋”になりがちなケースも多いのが現実ではないですか。
舟橋 「やるべきこと」と「やらないこと」、とくにやらないことを明確化し、それを“宣言”してしまうことが解決策です。本来、何でも屋さんは悪いことではなくSVに限らず、マネージャー、さらに経営者もそういう意味では何でも屋ですよ。最近、SVを職制として捉えるあまり、電話をとれないSVが出てきたというケースを耳にしたことがありましたが、やはり有能なSVは同時にパワーオペレータでなくてはならないと思います。ただ、意識して先ほどの4対4対2にシフトしていかなければいけないということです。そうしないと、むやみに忙しいだけの人ということになってしまいます。もちろんSVは電話応対をしっかりこなせなくてはいけません。でも、あえて電話を受けてはいけないのです。何故なら、オペレータを動かしチーム全体のパフォーマンスを上げていくのがSVの仕事だからです。かえって自分で汗をかいて電話応対しているSVの評価は下がってしまうということにもなります。