実際にクーポンメールを送る仕組みはどうなっているのですか。
服部 親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が管理するTSUTAYA会員DBとの連動で行っています。基本的には、TOLの会員DBには特定の会員にクーポンメールを配信したという履歴が残っているだけですから、その会員が実際にいつ来店しどんなCD、ビデオ、DVDをレンタル(購買)したかというデータを会員IDをキーに参照し、メール配信などに役立てています。従来クーポンメールは、「半額クーポン、10日間実施中」といった形で全店舗一律に行っていましたが、昨秋から各店舗ごとに日時やインセンティブの内容を自由に設定してクーポンを打てる「オンラインDMシステム」と呼ばれるASPサービスも開始しました。これは、例えば3カ月ほど音沙汰のない会員をセグメントしてメールを送るとか、来店頻度の高いロイヤル会員向けにサンキュークーポンのような形でインセンティブを与えるといった施策を、店長自らの判断で柔軟に行えるインフラを整備したものです。迅速に対応できるよう、「いつもTSUTAYA○○○店をご利用頂きましてありがとうございます」とか「今月はあなたの誕生月ですのでこのクーポンをプレゼントします」といったテキストを全て定型化しています。
必要以上に神経をつかうアドレス管理
個人情報保護の視点で毎月一定量を削除
在庫の回転率をさらに上げるには、会員の嗜好性をデータマイニングなどで分析し、個別に的確な商品情報を提供することも考えられますが。
服部 結論をいえば、データマイニングなどの手法では、会員の嗜好性は十分には分析できません。年齢や性別など会員の基本属性と作品のジャンルを組み合わせた分析は店舗の品揃えには効果的ですが、会員が作品を選ぶ基準はエモーショナル(感情的)な領域が多く、そのほとんどは時代の流行とともに移ろっていくものです。とくに映像レンタルの場合は、趣味趣向よりも、公開時に配給会社がどれだけコマーシャルを打ってくれたかとか、主演俳優の人気が上り坂なのか下り坂なのかといった、分析データでは読み解けない不安定要素の方が、会員動向に影響を与えやすい。このため、メールマガジンやサイトコンテンツで、「話題になっている作品」や「話題になりそうな作品」を推奨するという、マス向けのレコメンドも積極的に行っています。
では御社ではEメールマーケティングに付きもののワン・トゥ・ワン型サービスには注力しないということでしょうか。
服部 せっかく携帯電話にメール配信を行うわけですから、ワン・トゥ・ワン型サービスは行うつもりです。ただ携帯電話というのは、ただでさえ受け手側にパケット代がかかるのに、そこに向けてこちらが勝手に推測したレコメンド情報を提供するのは、かえってCS低下を招きかねません。そこで、当社は会員に事前に登録頂いた要望事項に沿った「リマインド情報」として提供していこうと考えています。これは、例えば「アニメーションの新作が出たらメールでお知らせします」とか「TVドラマがDVD化されたらメールでお知らせします」というアイコンを設定しておき、そこをクリックしてもらうことで、個別に送って欲しい情報を事前に会員に選んで頂くものです。今のところまだ十分に分類しているわけではありませんが、ゆくゆくは作品名や俳優、監督、アーティスト名などより細かくリマインドできる仕組みを構築したいと考えています。
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