VoIP化とセキュリティ強化を目的に
SIPサーバー、シン・クライアント導入
――IVRの話が出ましたが、これを含めてITシステム面ではどのような取り組みをされていますか。
阿部 会員数の増加に伴う呼量増大をカバーするため、これまではとにかくCSRの数を増やすことで対応してきました。しかし、ブロードバンド会員も増えるなかで、従来のやり方に加え、ITシステムやツールを導入することでセンター自体の高機能化を図ることは、コストバランスなどの効率面だけでなくCSの観点からも必須だと考えています。例えば、キャリアの着信者課金電話サービスを利用すると、相応のコストがかかりますが、当社のIP電話サービス「ぷららフォン」のプラットフォーム(広域IP−VPN)を活用することで、問い合わせ電話の無料化を実現しています。
また、このほどIP化を前提にしたコンタクトセンター・システムとしてNECのSIPサーバー(ユニバージュSV7000)と、オペレーション端末にサン・マイクロシステムズのシン・クライアント(サン レイUltra-Thin Client)を採用しました。導入の動機は、情報セキュリティに万全を期することと、今後IP電話とCTI/CRMシステムの連携を図る際の容易性や拡張性を確保するためです。サンのシン・クライアント採用により、CSRの顧客情報照会端末は外部記録デバイスを持たず、サーバーに保存されたデータの表示のみを行うことになります。顧客情報を外部記憶メディア(リムーバブルディスク)などで取得することを不可能にし、また、アプリケーション処理も個々の端末では一切行わず、サーバーに集中化することでアクセスの制限や履歴の一元管理ができることから、情報漏えい対策の強化が図れました。今年度上期中に法人サービス、パートナー・代理店向けを含めた全センターへの設置を完了する予定です。
さらに、SIPサーバーによって音声とデータのネットワーク基盤を一元化し、顧客対応、管理ツールと連携を図ることが容易になり、高度なコールセンター機能を実現することが可能となります。また、システム運用に関する管理工数を大幅に効率化できます。今回のシステム導入時には、CTS(コールトラッキングシステム)などに用いるアプリケーションツールを同時に更改しWebベースで共通化しており、今後の機能拡張と高度化に備えています。
――PCベースでもシン・クライアントはできますが、サン(UNIX)ベースにした理由は。
阿部 汎用のPCに比べサンベースの上でしかアプリケーションが動かないことが足かせになることも想定しましたが、コールセンターで使用する業務アプリケーションは自分たちで十分コントロール可能であること、さらに、次期ステップで導入を想定しているシステムについても方式レベルでの動作検証を実施しており、セキュリティー性能、保守・メンテナンスや運用性、拡張性などあらゆる角度から検討した結果、PCベースよりメリットがあると判断しました。コスト的にも現時点ではPCベースとそれほど差はありません。
CTI/CRMシステム連携を本格化
実効性のあるES向上策も追求
――さて、次のステップとして取り組まれようとされていることは何でしょう。
阿部 まず、システム面ではプラットフォームの整備に一応のメドがついたことから、今後CTI/CRMシステムとの連携を本格的に図っていきます。これにより運用の効率化だけでなくCS向上も同時に実現する考えです。例えば、IVRを導入するにしても単に応答率アップを目的とするのではなく、自動音声でリアルタイムにCS調査を実施できる仕組みを構築するなど、さまざまな検討を加えています。一方、運営面では先ほども触れましたマルチスキル体制の一部見直しが課題ですが、私はもう1つ、ES(従業員満足度)の向上を重要課題として捉えています。当センターの運営は、今後規模が拡大しどのようにシステム化しても、自ら管理・教育することが基本で、アウトソーサーへ丸投げすることなどは考えていません。それだけに派遣社員のESはスキルアップや優秀な人材の定着率などを考慮する上で大きなポイントになります。まして、コールセンターの雇用確保の環境は今後ますます厳しくなると予想されるだけに、従来から実施しているモチベーションアップの方策だけでなく、例えば、知人への口コミによる就業紹介率によってESポイントや従業員ロイヤルティを測るなど、CSR個々のプロファイルなどと照らし合わせながら、実効力のあるES向上策を追求していく考えです。
(聞き手・鈴木 信之)
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