視聴世帯拡大と商品力アップによる
ブランド力の定着が最優先課題
最近は“チャネルミックス”を推進する通販会社も増えているようです。Webチャネルへの展開についてはどのように考えていますか。
佐々木 興味はありますが、在庫システムをはじめビジネスモデルがまったく異なるため安易な参入は考えていません。TVは商品が放映されている時間帯に在庫を確保すれば済むという考え方が基本ですが、インタラクティブ性の強いWebの場合、全商品について常時在庫を確保する必要が生じます。
また、当社のターゲット層とミスマッチするという問題もあります。以前10日間ほどかけて、エージェントに受注業務と併せてWeb接続について確認してもらったところ、90%近くの視聴者からインフラ環境が整っていないとの回答を得ました。仮にWebチャネルを活用するのであれば、Webの利用者がどんなコンテンツを嗜好するのかの検証作業が必須となります。しかしその一方で、当社には自社で番組を制作しすでにコンテンツを保有しているという強みもあります。今後ブロードバンド環境が一般化し、コアとなるお客様層に既存コンテンツをアピールできるようになってからでも参入は遅くないと考えています。
CRMの観点からライフタイムバリュー(LTV)という概念が注目されています。顧客を生涯にわたってリテンション(維持)するという発想に基づくものですが、今後ターゲットとする顧客層の幅を広げる考えはあるのでしょうか。
佐々木 将来的には当然視野に入れています。生放送の時間枠を拡大し夜間は20代のOL向けの番組作りをしたり、土日に父親向けのメニューを組み込むなど、選択肢はさまざま。男性の場合、今のところ女性ほど購買意欲が高くないですから、趣味の分野など商品の対象をかなり細かく絞り込む戦略は必要になると思いますが。
ただ当面は視聴世帯の拡大と商品のグレードアップの2点に注力することで、既存ターゲット層にQVCブランドを定着させることが最優先課題と考えています。現状はそのための基盤作りを終えたという段階。おかげさまで、2005年に200億円という会社設立当初掲げた売り上げ目標は、1年近く前倒しで実現する予定です。売り上げの伸びと並行してリピート率もさらに高まるだろうと考えています。
(聞き手・高橋 本成)
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