260万人という膨大な顧客DBを運用していくには、データメンテナンスの効率化が必須となります。住所変更などにはどのように対処しているのですか。
斎藤 住所変更については、その大半が提携先のカード会社にまず連絡が入り、そこで修正された情報が当社のお客様DBに送信され、データを自動更新する仕組みを活用しています。
実際店舗の約3割が集中する首都圏の場合、年間で転居率が17〜18%に達するため、データメンテナンスは重要課題。メンテ量は全国で1日2000件、年間約70万件に上るため、これだけ膨大な情報が正確さを欠けばCRMどころではありません。
DMに代わる新たな販促チャネルとして、Webやモバイルの活用については、どのように考えていますか。
斎藤 Webサービスについては先ほど触れましたが、モバイル活用は今後とりわけ注力する分野です。昨年11月、AOYAMAカード会員向けに携帯電話の専用サイト(QCMマイページ)で各自の購入履歴や、現在であれば春向けのキャンペーン内容などを確認できるサービスをスタートしました。購入後には、1週間から10日後に店長からお礼を兼ねて着心地などを確認するメールをお送りし、両者の信頼関係を高めています。
ただ青山のお客様は40〜50代が中心と、携帯電話の操作に不慣れな方が多いため、小型の外付けアダプタ(イーシステムとプリモ販売製)をインセンティブとして提供、それを携帯電話に装着し、あらかじめ登録されたサイトに瞬時にアクセスできる環境を整えました。アダプタは、初期台数として100万台、ご用意しています。
年間で2着の購入客確保に向け
今後モバイル活用を強化
CRMで効果が見えにくいといわれるROIについてはどのような見解ですか。自ら与信リスクをとったりマイニングツールを導入したりと、かなりコストをかけている印象を受けますが。
斎藤 CRM案件の7割は失敗するといわれますが、その要因はお客様の基本属性がきちんとメンテナンスされていないからだと考えます。仮に青山の名簿に登録された計600万人近くのお客様に無造作にDMを送っても、膨大な量の郵便が返送されてくるでしょう。当社の好調ぶりの最大のポイントはお客様情報をクレジットカード事業とリンクすることで、メンテを円滑に進める仕組みを確立したことです。実際、メンテの精度を上げればDMが確実に先方に到達し無駄な後処理が必要なくなることで、販促費の15〜20%は回収できますから、これに売上げを加算すれば十分ペイできるのです。
またクレジットシステムや顧客システムについては、与信管理のためのさまざまなネットワークと接続するなどの過程で数十億円のコストをかけていますが、それでも今3月期には累損一掃を見込めるほど、CRM戦略は順調に推移しています。
モバイルという新たなチャネルを得て“攻撃的”CRMにもますます拍車がかかりそうです。今後のロードマップを教えて下さい。
斎藤 これはパソコンも同様ですが、とくにモバイルについては他の流通・マスコミ関連企業とも積極的に提携し、コンテンツの幅を広げることで付加価値を高めていく方針です。
とにかく最終的には、年間で2着のスーツを購入して頂けるお客様を何百名確保できるかが勝負。そのような方は月に最低2度は来店し、ネクタイやカジュアルシャツなどの小物を必ず購入されていきます。こうした青山ファンを増やすうえで、モバイルが最適なツールになると考えています。
(聞き手・高橋本成)
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