CRMを成功させるには、安定した顧客基盤をどう築くかがカギとなります。御社にとっては、まさにAOYAMAカード会員がそれに当たるのでしょうが、実際、従来のクラブカード会員と比べ、売上貢献度の格差はどのくらいあるのですか。
斎藤 全国に直営展開する約610店舗の平均値でみますと、クラブカード会員が全来店数の1〜2割を占めるのに対し、AOYAMAカード会員は3〜4割に上ることが明らかになっています。
売上貢献度でみると、2002年6月のキャンペーン時にAOYAMAカード会員がクラブカード会員より購買単価で最大8000円上回ったというデータが残っています。DMへのレスポンス率もクラブカード会員約3%に対して、AOYAMAカード会員は10%超、場合によっては17〜18%に上ることが分かりました。実際、AOYAMAカード会員を増強した店舗ほど業績が伸びており、双方の格差は歴然といえます。
2〜3年以上来店のないような休眠顧客や離反兆候のある顧客への対策はどう講じていますか。
斎藤 あくまで攻撃し続けるというのが、CRM戦略における当社の基本スタンスであり、休眠・離反対策に重きは置いていません。例えば“休眠”という発想を持つこと自体、CRMへの意識が希薄といえるのではないでしょうか。極論をいえば、当社にとって休眠とは年金生活に入って、もうスーツを購入する必要のない方々となりますが、商機はそのご子息などへと広がっていきます。
離反についても同様です。むろんお客様のクレームの声を分析して売り場にフィードバックする仕組みは確立していますが、過度に気にしすぎると、大局的な視点を見失ってしまいます。
その一方で、解約状況はどうですか。
斎藤 解約は年会費を徴収する年更新の時期が最も多くなります。年間で会員数の約1割というのが相場ですから、現在であれば約26万人前後は確実に解約する計算です。ただその一方で平均して月5万人、年間最低60万人は新規に会員化している。つまり差し引き35万〜40万人の純増になっているのです。新陳代謝の面からも、これは極めて健全な数値と認識しています。
円滑なメンテナンスに適した
クレジットカード会員情報
顧客動向の分析をキャンペーンなどにつなげる過程はどうなっていますか。
斎藤 分析はマーケティング推進部を中心に、NCRのデータマイニングツール「Teradata」を活用して、社内で進めますが、キャンペーンは全国で32人のブロック長やそれぞれ管轄の店舗マネージャーなどと連絡を取りつつ行います。
例えば2002年、11月に誕生日を迎えるAOYAMAカード会員向けに、ハンカチ入りDMを発送するキャンペーンを実施しました。当該会員のなかから、2000年10月以降に2万円以上の購入実績のある方、約9万3000人を抽出して行った結果、12.3%のレスポンス率を記録。平均16%の対販促経費率が約6%に削減されたことで、来店率や購入金額の高さが浮き彫りになっています。
こうした単純なR(Recently =直近来店)F(Frequency=購買回数)M(Monetary=購買金額)の手法よりさらに踏み込んだ分析も行っています。その典型として、2003年1月に実施するハイグレードが売りの新ブランド「サビルロー」向けキャンペーンでは、40〜50歳代を対象に過去の購買履歴など、想定できるあらゆる抽出条件を詳細に分析し、ターゲット会員を10万人弱に絞り込みました。
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