雪印ブランドは2度崩壊した
信頼回復は長い時間がかかる
雪印ブランドは失墜の危機に瀕しましたが、最近は販売シェアも回復基調にあるようですね。そうした努力が少しずつ一般消費者に浸透してきたということでしょうか。
脇田 確かに当社の主力商品であるバター、チーズ、マーガリンは、国内トップシェアに返り咲いています。また3カ月に1度、東京と大阪の2カ所において、マーケティンググループ主導で行っている定点調査では、「雪印商品を購入頂いているかどうか」との問いに対して、「はい」と答えたお客様が事件直後の28%から、直近の4月には65%まで回復しています。
しかし、私はシェア回復と信頼回復は全く異質のものと認識しています。例えば過去80%以上のシェアを確保していたバターも復調の兆しをみせていますが、これはお客様が昔から馴染んだ味を再び選んで頂いているいう、極めてノスタルジックな要因が大きいのではないかと考えています。つまり、雪印乳業という会社自体を許したということとは、全く別次元の話なのです。先ほど「失墜の危機に瀕した」とおっしゃいましたが、雪印ブランドは1度のみならず2度崩壊したんです。その重みを考えれば、信頼回復がそれほど生易しいものであるはずはないのです。これには今後5年10年、いやもっとかかるかもしれません。
信頼回復の度合いを見極めるためにも、今後ブランド戦略をさらに強化する必要がありそうですね。
脇田 現在、専門プロジェクトを立ち上げて中期経営計画を検討中ですが、そのなかでブランド戦略は大きな柱です。現在ブランド価値を含め、あらゆる角度から内外の諸環境を分析しているところです。この結果をもとに再建を確実なものとする事業戦略を策定し、来年早々には公表したいと考えています。
とくに私が懸念しているのは、小学生や中学生に代表される若年世代の動向です。当社にまつわるこの3年間の一連の報道のインパクトを考えれば、こうした方々が、本当に当社の商品を支持してくれているかははなはだ疑問です。その点をしっかり把握しないと、間違った経営判断をすることになりかねません。ですから、シェア回復を素直に喜ぶわけにはいかないんです。
信頼回復は重要なテーマですが、御社はブランドイメージがリスク管理と密接に関わっていることを、一連の不祥事によって、図らずも立証しました。昨今中国市場の脅威がさかんに喧伝されていますが、リスクに対するそうした一見地味な取り組みこそ、今後重要な差別化ポイントになっていくのではないでしょうか。
脇田 おっしゃる通り、リスク管理は最低限おさえておかなければいけないテーマです。商品というのは、必ず競合他社が登場してきて、いずれは互いに代替可能なコモディティと化していくわけですね。そのなかで勝ち残るためには、むろん商品力は大前提としてありますが、最終的に企業イメージ、または企業そのものという、目に見えない要素を包含したなかで、お客様は商品を選択されるんだろうと思います。その意味で、リスクマネジメント型CRMの推進によるソフト面での品質向上は、ブランドを回復し、向上させるうえでも不可欠な取り組みだと考えています。
(聞き手・高橋本成)
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