化粧品市場は成熟化したといわれるなか、御社は昨年度最高収益を更新するなど、業績を順調に伸ばしています。現状をどうとらえていますか。
大矢 確かに成熟してきましたが、一方で消費者ニーズが多様化し、購買傾向は商品価値と価格のいずれかの方向へ二極化しています。その点で、ブランドや商品戦略を個別に展開しやすくなりました。また化粧品の枠にとらわれず、健康や美容、プチ整形などの美容医療、サプリメントをはじめとするビューティーフーズまでを市場規模と捉えれば、成長の余地は格段に大きくなります。しかし半面、通信販売など他業態の攻勢で競争も激化してきました。
混沌とした状況下、御社はどのように独自性を発揮し、好業績につなげてきたのでしょうか。
大矢 2001年以降「店頭基点」というコンセプトを明確に打ち出し、業務改革を推進してきました。お客様とお取り引き先である販売店、そして当社の三位一体の形を具現する店頭にこそ、新商品やサービスにつながる価値創造のヒントがあると考えたからです。
改革の第一弾として、まず店舗情報を詳細かつ正確に把握するためのインフラ整備に着手しました。全国約1万6000に上る化粧品専門店にPOSレジ端末「パートナー21」を導入し、需要予測の精度向上や在庫削減を促したほか、CS面ではお客様の肌や肌色を測定し、スキンケアやメーキャップなどのカウンセリングに活用する肌診断機器「スキンビジオムII」を設置。さらに店頭でカウンセリング販売に従事するビューティーコンサルタント(BC)が携帯端末「SiDO」のiモードを利用して、お客様の声をリアルタイムに本社にフィードバックする一方、BC向けには店頭で役立つ情報を本社から提供するというインタラクティブな仕組みを構築しました。
今後は店頭のみならず、「リアル」と「バーチャル」を含む多彩なチャネルをお客様情報を収集するツールとして積極的に活用し、解析結果を店頭改革、ひいては来店促進につなげるという、全社規模でのクリック&モルタル戦略を展開していく方針です。
4種類のチャネルに対応し
年間53万件の顧客情報を取得
それぞれのチャネルごとの役割はどうなっていますか。
大矢 まず中核となるお客さまセンターでは、計45名のオペレータが年間15万件の問い合わせを受け付け、商品説明や販売後のフォローに携わっています。また全国90余の販売拠点である支社および営業本部にお客さま窓口の担当者を配備し、各エリアの窓口としてお客様と接するとともに、地元の企業や任意団体、学校などの要望に応じて開催する消費者セミナーを開催しています。このセミナーでは、昨年約14万人に上るお客様と直接触れ合う機会を持つことができました。
またWeb対応では、資生堂のホームページ「資生堂ウェブサイト」を通じ化粧生活を支援する情報を提供し、月間平均1200万ページ/ビューを記録、目下約45万人に上るネット会員向けに随時キャンペーンを展開しています。さらに、東京・表参道には「コスメティックガーデンC」というショールームを開設しています。このショールームには、年間約12万人以上のお客様に来場いただき、お客様1人ひとりに魅力あるサービスを提供するとともに、お客様の声を集め、マーケティングや営業支援に役立てています。とくに商品の開発担当者や研究員が直接お客様の声を聞く場として活用しています。これら4つのチャネルから取得した情報を一元的に管理するのが、当社独自のCRMシステム「ボイスネットC」です。
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