貨物市場全体が伸び悩むなかで、宅配市場が急ピッチで拡大しています。背景をどうみますか。
芝崎 当社の設立当初、宅配市場の主流は圧倒的にCtoC(個人間取引)でしたが、その後通販に代表されるBtoC(企業・個人間取引)のニーズが伸び、最近はBtoB(企業間取引)が注目され始めています。とくに近年、企業は工場や物流拠点の在庫圧縮を進めるため、適正受注と生産・輸送管理の傾向が強まっており、こうした動きが多頻度小口輸送という宅配の事業モデルと合致するようになりました。これを反映し、当社でも荷主が法人企業である比率が、年間約9億8000万個に上る総取り扱い数量の約75%を占めています。法人市場におけるBtoCの成長余地は依然大きく、今後はBtoBニーズを取り込みつつ、引き続き宅配市場をけん引していくのではないかと考えています。
競合他社が攻勢をかけるなかで、御社は最大の差別化ポイントをどこに置いているのですか。
芝崎 ずばり地域密着性の強めることです。主軸の集配・再配業務を担う宅急便センターは現在全国約2500カ所に上り、こうした拠点数の多さがきめ細かなサービスにつながっています。
とくに注力しているのが、不在時の再配達を迅速化するなど、荷受け側のお客様(エンドユーザー)に向けたサービスの充実です。元来、運送業というのは、お金をいただく荷主側に軸足を置くケースが一般的であり、これが運賃の値引きや集荷時間の延長など不毛ともいえる競争を生んできました。
これに対して、当社は荷受け側のCS向上を促進し支持基盤を広げることで、結果的に荷主側からの集配依頼を増やすという好循環モデルを追求してきたのです。拠点数の多さはそのための必須条件であり、今後10年間で約5600カ所まで増やす方針です。
付帯業務を切り離し
「集配」に専念する環境を整備
しかし、先行投資して拠点数を増やすことは相応のリスクが伴うと思います。効率よく拡大していくためのポイントは何ですか。
芝崎 その点については、今年4月に導入した「宅配便エリア・センター制」の効果に期待しています。これは、宅急便センターが中核の集配業務に専念できるよう、間接(維持管理)部門を切り離しコストを抑制することで、増設しやすい環境を整えたものです。従来宅急便センターでは、セールスドライバー(SD)に加え、一部の内勤者がお客様からの集配・問い合わせ受付や売り上げ伝票管理を担当していましたが、集配が集中する時間帯では問い合わせの電話に対応しきれないケースも多く、これがCSを下げる要因となっていました。そこで、電話受付業務を「サービスセンター」、伝票管理をはじめとする事務処理を「事務管理センター」として独立させ、それぞれ都道府県ごとにある76カ所の主管支店に併置したのです。
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