必ずしも不在率を少なくしようという発想ではないのですね。
芝崎 むろん、双方のミスマッチを少なくする施策も講じています。一昨年スタートしたインターネットサービスは、その典型です。これは、荷物を預かった当日、お届け先にどういう方からのどんな荷物を明日何時の指定でお届けしますと事前通知するものです。これにより、受け取り人は明日何時に来るんだと分かる。都合が良ければそれで良し、悪ければ夜の何時に変更して下さいというメールを返信できます。時間指定はそれまで荷受人からしかできませんでしたが、このように受け取る側からできる体制も確立したわけです。ただその一方で、「不在」は必ずしも悪ではないという考えも持っています。むしろ、お客様が帰宅後に心理的ストレスを与えないことがCSのためには重要と、「SDダイレクト通信」のようなサービスを強化しているわけです。
都道府県にとらわれず
サービスセンターの合理化を視野に
ところでCRMというと、業種によっては売り上げ貢献度などをベースに顧客をランク付けする動きもありますが、その点についてはいかがですか。
芝崎 サービスセンターに関していえば、そうしたアプローチは適用できません。当社にとって優良顧客とは、「定時」の集配契約を結んでいるケースに相当しますが、そもそもそうしたお客様は集配依頼や問い合わせの必要性がほとんど生じませんから。当面は、宅急便エリア・センター制導入で強化された機動力を武器に、荷受側のCSを高める施策をさらに加速していく方針です。
まだ導入後半年強ですが、CS効果はすでに表れているのでしょうか。
芝崎 現時点で確かなのは、「電話がつながらない」というクレームが全くなくなったということくらいです。ただ、将来的にはROIなど数値効果も含め、徐々に顕在化していくと思います。問い合わせ受付や経理などの間接部門を集約したことで、今後宅急便センターを増設するごとに、SDという利益をもたらす直接部門の比率が自ずと高まるわけですから。宅急便エリア・センター制導入に伴う投資額はCTIシステムなど情報インフラ構築費を中心に約48億円に上りますが、定着するにつれ、ROI結果は次第に現れてくると思います。
コールセンターには、分散・集中の二元論が付いて回ります。将来的なロードマップとして、サービスセンターを一元化し、維持管理コストをさらに抑制する方向性はないのでしょうか。
芝崎 コール量が膨大なため、1〜2カ所に集約してしまうことはありませんが、合理化の余地は十分あるとみています。ただそこで留意すべきは地域性です。これは経済、文化など様々な要素が含まれますので、現在のような都道府県をベースにした編成では自ずと無理が生じてしまう。東京(7カ所)、神奈川(3カ所)など、すでに複数のサービスセンターを設置しているケースもあり、今後はこうした柔軟な対応を全国レベルで展開していく方針です。いずれにせよ、コールセンターは宅配事業の基盤である集配ネットワークの要として、いわば司令塔の役割を果たす存在です。適宜最適化を図り、再来年をメドに再編を終えたいと考えています。
(聞き手・高橋 本成)
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