クレジットカード業界では、近年、コンタクトセンターの機能強化に取り組む企業が多いように見受けられます。その背景をどのように捉えていますか。
山下 この業界は、その母体企業から大きく流通系・信販系・銀行系の3つに大別することができますが、いずれの会社も、自社のカードを活用するエンドユーザーと直接的な接点が少ない、という悩みを抱えています。しかも、1人当たり複数枚のカードを持つケースが多いことから、サービスに差別化が必要なうえに、休眠顧客の掘り起こしや離反顧客防止も直接アプローチする機会が少ないので難しい。コンタクトセンターは、それができるほぼ唯一のチャネルと認識されつつあることが、当社も含めて機能強化――コンタクトセンターの改革に着手する企業が増えている背景にあると考えています。
センター改革の視点について、具体的に教えて下さい。
山下 まずは、ローコスト・オペレーションを最優先課題と捉えています。最小限のコストで生産性と品質の両方を向上する工夫として、昨年から労務構成の改革に着手、高い成果を収めつつあります。
具体的には、パートタイマーの有効活用です。当社センターのエージェントは、直接雇用によるパートタイマー、エージェンシーからの派遣社員、正社員の3種類の雇用形態から構成されています。それぞれの人件費を分析すると、パートタイマーを“1”とした場合、派遣社員は“2”、正社員は“3”という比率になります。従って、パートタイマーの構成比率を上げることが人件費削減に直結するのです。もちろん、それには個々のスキルアップが前提となりますので、今年から能力に応じたキャリアパス制度を導入しました。
それは、これまで正社員が担当していた領域、例えばスーパーバイザーや品質管理担当者などにもパートタイマーを登用しよう、というプログラムなのですか。
山下 新制度においては、センター内のポジション――役割について、パートタイマーと正社員の垣根は存在しません。パートタイマーのエージェントでも、勤続年数や身につけた能力に応じて報酬もアップするし、スーパーバイザーやアシスタント・スーパーバイザーになる道も開かれています。例えば、今年度センターに配属された新入社員は、すべて普通のエージェントからスタートしますし、新規採用のパートタイマーでも、以前、他のセンターで勤務経験があって高いスキルを持っていれば、4段階あるエージェント・スキルグループのなかでも高い領域からスタートできます。つまり、雇用形態に関わらず、高い能力を持つ人に、それに応じた役割についてもらうための制度といえます。これによって、パートタイマーのモチベーションが向上し、離職率も大幅に改善できています。
一方、正社員にとっても、緊張感が生まれて短期間でスキルのレベルアップができる動機になると考えています。なお、派遣社員は従来通り、サービスレベルが低下しそうな時や、夜間の緊急対応といったスクランブル要員として採用しています。
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