新制度導入以降、センターの労務構成に変化はありましたか。
山下 狙い通り、パートタイマーの構成比率が大幅に上昇しています。現在は約90%を占めており、なかにはアシスタント・スーパーバイザーを任せられる人材が育ってきました。
数値をベースにした業務改善計画
ポイントは仮説を検証するPDCAの実践
御社にとってのコンタクトセンター改革とは、人材育成を柱に据えた労務管理の改善を推進することで、運営コストの構造を変革すること、と考えていいのでしょうか。
山下 いかに高価で最新のシステムを導入しても、それを使いこなす人材の育成がおろそかでは、センターの存在価値が問われることになります。その“育成”をいかにローコストで実現できるか、という点にセンター運営の成否がかかっていると考えています。もちろん、そのための仕組み――システムによる支援も重要となりますので、FAQの充実による情報共有を図り、同時にスーパーバイザーとエージェントのコミュニケーション・ツールとして双方向イントラを導入しています。
運営改善の目標として、中心に据えている指標は何ですか。
山下 まずは、離職率です。当社のセンターは、顧客からの一般的な問い合わせに対応するサービスセンターと、管理センター(債権管理)、カードセンター(審査)の3つのセンターに分かれていますが、サービスセンターの離職率が比較的高い。これは、会話の主導権をお客様が握っていて、エージェントにとっては何を言われるか想像できない、というストレスが大きいせいだと捉えています。これをいかに軽減し、離職を防ぐかは永遠の課題です。
もうひとつ、離職率の問題を解決するには、新しい労務管理の制度や、顧客対応を支援する仕組みがエージェントに受け入れられているか否かを認識することが重要となります。そのために、今年からエージェントに対するES調査も開始し、改善点の洗い出しを行っています。
現場の意向を無視したマネジメントを防ぐ、ということですね。ES調査は、具体的にどのような項目から構成しているのですか。
山下 仕事・職場(環境)・上司・労働条件・組織人事・経営――の6つの観点から設問を組み立てています。無記名形式なので、かなり本音が聞けていると捉えています。
新たな問題点は抽出できましたか。
山下 もっとも多く聞かれた意見は、「忙しすぎる」というものでしたね。これは、センターの稼働率を約90%に保っている影響で、ある程度予想していました。
しかし、この「90%」という数値は、ある根拠を持って設定しているもので、優秀なエージェントは理解してくれているようです。
90%の稼働率というのは、一般的には“バーンアウト(燃えつき症候群)”の発生が危惧されるほどの数値ですが、その根拠とは何ですか。
山下 当社のセンターでは、あらゆる業務改善活動に関して、“仮説検証型”のスタイルをとっています。例えば、「稼働率を今よりX%上げたら離職率がY%上がる」「研修期間を1カ月短縮させたら離職率はX%改善する」などの仮説をたて、それを検証するPDCAを常に実践しているのです。稼働率に関しては、このようなPDCAサイクルを実践した結果、「90%なら離職率も上がらないし最も生産性が高い」と判断したギリギリのラインです。当社のエージェントは、基本的に3交代制の4時間勤務となっていますが、これも「90%の稼働率で業務に集中できる時間」という仮説を立て、それに基づいて試行を繰り返した結果、採用された体制です。
このような仮説検証型の業務改善活動によって、当社のエージェントの平均勤続年数は2年を超え、ローコスト・オペレーションの実現に大きく近づいています。ES調査は、このPDCAのベースとなる仮説を組み立てる“素材”としても位置付けており、今後は6カ月周期で実施したいと考えています。
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