Eメールの件数を減らす取り組みを行った、ということですか?
佐伯 ここ数年間のセンター運営で確信したのですが、Eメールで対応できる案件のほとんどはWeb上で完結できるはずだと考えています。それを可能にするのが、FAQの高度化です。当行では、FAQのモニタリングを項目ごとに細分化して実施、充実させたうえで、Eメール問い合わせのアイコン位置の変更に踏み切りました。その結果、CSの低下を招くことなく、問い合わせそのものを減らすことに成功したのです。
その取り組みに至る動機は。
佐伯 開設口座数の増加に伴い、お客様からの問い合わせも右肩上がりで増えていきました。当然、センターの規模も拡張してきたのですが、このままでは経営の重荷になりかねない状況でした。とくにEメールは、受信時間を企業側が制御できない、24時間以内に返信しなければいけない、対応に要する時間が長くかかる――などの理由で、センターの運営コストに与える影響は大きい。やり取りに要するコスト(通信費)が電話より安いのは確かですが、すでに呼量予測に基づいたスタッフィングといった対応ノウハウが確立している分、電話の方がコストのコントロールをしやすいのです。
また、他行でも同様ですが、Eメールでは個人情報に深く関わる部分―IDやパスワードに関する問い合わせなどは、セキュリティの観点からお答えできません。このような情報は、電話(IVR)や個人向けのポータル・サイト経由、もしくは郵送でしかお答えできません。これも『Eメールの問い合わせはWebで完結できる』と申し上げた理由のひとつです。将来的には、コミュニケーション上必要なものを除き、Eメールの問い合わせをまったくの“0”まで持っていくことを目標としています。
FAQの構築ポイントは
“顧客の動線を見極めること”
Web上のFAQは、充実に取り組んでいる企業が多い割には顧客満足度が低い、ということが大きな課題となっています。専用の構築ツールを導入しているのですか。
佐伯 今のところは、完全に自社のノウハウで構築・運営していて、ツールは導入していません。FAQに関しては、毎日のモニタリングでお客様の利用状況を分析する以外に質を向上する手段はないと考えています。具体例をひとつあげれば、「見られていないQ&Aは徹底的に削除する」ことです。これは、スペースの無駄であること以上に、お客様の検索の邪魔になります。
編集部が実施した消費者調査では、検索効率の悪さと並んで、「項目が的外れ」という回答が目立ちました。Q&Aの項目は、コールセンターでの対応履歴をベースにリストアップや更新しているのですか。
佐伯 Q&Aの作成や更新作業の最大のポイントは“お客様の動線を探ること”です。電話やEメールでの問い合わせ状況――どういったプロセスで質問がきているのか――を詳細にレポート化して、その結果をWebに反映しています。
抽象的な言い方になりますが、コンタクトセンターでは「お客様の声を聞く」ことは当たり前で、「言いたいことを事前に知る」ことが大切だと考えています。引いては、それが迅速な経営判断につながると考えています。
(聞き手・矢島 竜児)
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