不得手だった顧客データ分析を
“会員化”で実現する
リアル店舗を縫う戦略で、これまで右肩上がりの成長を続けてきたわけですが、リアルとバーチャルを融合することで、Eビジネスはよりダイナミズムを発揮すると思います。今後本格化しようとされている店舗との連動策について説明してもらえますか。
福井 リアル店舗との連動は大きな可能性を秘めており、すでに実験的取り組みを始めています。
例えば、イオンのテレビCMをみて当サイトにアクセスしたお客様の約9割が、その後ジャスコの店舗に足を運んで買い物をされるという統計結果が出ています。消費者の多くは購買行動の前に、一旦当サイトで目当ての商品情報に目を通したり、商品の取り扱い店舗を確認する傾向にあるのです。また、イオングループとして新商品を発売する際は、イオンショップで先行販売し、そこでの反応をイオンのバイヤーや商品企画担当者らが検証後にジャスコ店舗に投入するというマーチャンダイジングの仕組みを昨年から作っています。
マーチャンダイジングといえば、マーケティング活動と連動した品揃えの適正化、という観点で、従来から小売業では取り組むケースが多いようですが、御社の成功した事例について具体的に教えて下さい。
福井 昨年ジャスコで独占販売してヒット商品となったデジタルカメラ(日本ポラロイド製)はその典型です。当初、主婦層の支持を得られるか不安もありましたが、まずイオンショップで販売した結果、一晩で2000台に上る売れ行きを示したことで、本格的にジャスコでの店頭販売に踏み切ったという経緯があります。
また、昨春ECサイト上で約200台/月を売り上げたイオンブランドの自転車「カラーシティサイクル」の例も注目できます。当初自転車は組み立て規制の問題から配送が困難と、サイト上でのラインナップからはずしていましたが、リリース時にテレビCMで告知されたのを機に、“自転車”をキーとする検索が500件/週と急増しました。そこで、セットアップ体制を整備して、急きょ販売体制を確立したのです。
効果を最大化するには、イオンショップ会員とジャスコ店舗の来店客それぞれの購買行動を共通の属性データなどで紐付ける仕組みも必要になるのではないでしょうか。
福井 おっしゃる通りです。その意味で、究極的な目的はジャスコの来店客全てをイオンショップ会員化することだと考えています。そもそもイオングループは、これまでPOSデータを利用した売れ筋情報分析は得意でしたが、顧客属性に応じて購買動向をみるといった顧客軸でのデータ分析は不得手でした。それが“会員化”で実現することは、当グループにとって非常に有意義なことです。
(聞き手・高橋 本成)
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