――百貨店をはじめ流通大手各社が苦戦を強いられるなか、通販市場は堅調な伸びをみせています。背景をどうみますか。
 「自宅にいながら注文できる」という通販の利便性が改めて見直されているのでしょう。販売チャネルとして現在通販市場の約半分を占めるカタログを軸にTVやインターネットへと拡充する一方、取り扱い商品が当初のアパレル主体から化粧品など美容関連、健康食品、家電製品へとすそ野を広げてきたことも大きいです。しかし、私自身は通販市場全体が必ずしも上昇基調にあるとはみていません。例えば現在、当社がもっとも注力しているTVショッピング市場をけん引しているのは、CSデジタル放送で24時間専門チャンネルを展開している米国型の通販会社であり、地上波でスポット的にCMを打つ従来型はいずれも苦戦しています。また、当社の売り上げの8割強を占める家電商品のなかで好調を維持しているのは、PC関連機器をはじめとするデジタル情報家電。冷蔵庫、洗濯機をはじめとする白物家電はデフレの影響もあり低調気味です。
つまり、通販の市況自体は一般の流通市場と大差がなく、むしろ流通大手が多様な消費者ニーズを踏まえたマーケティング戦略を本格化するなかで、リアル店舗と通販入り乱れての競争が激化しているのが実情です。
――ただそうはいっても、御社はバブル崩壊後の長引く流通不況下にあっても右肩上がりの成長を維持してきました。その秘訣は何ですか。
 市場で評価が定着してしまったような一見ありきたりの商品を消費者の日常生活の視点から改めて見直し、新たな需要を創出しようと努めてきたからです。実際、TVショッピングの番組制作の現場でもっとも苦心しているのは商品の複雑な機能説明ではなく、その商品を使うことで日常生活がどのくらい快適になるかという充足感を伝えることです。
例えば、元来会議の録音に使うなどビジネス用途が主体だった『デジタルボイスレコーダ』については、多忙でお互いの生活がすれ違いになりがちな家族間のメッセージ交換ツールとしての利用を提案するなどして、昨年約12万台を販売しました。こうした確かな商品力をベースに新しい生活文化を提案しようという姿勢がとくに主婦層をはじめ40〜60代の年齢層に受け入れられ、従来にはない新しい市場を開拓できました。
|