緊急時のコールセンターを支えるのは
気遣いとマネージャーの冷静な視点
――今回のような突発的な事故が起こった場合、顧客窓口であるサポートセンターの役割が非常に重要です。リスクマネジメント体制はどうなっていたのですか。
大三川 もちろん一般的なリスクマネジメント体制は用意していました。とくに以前からウイルスの大規模な流行「アウトブレーク」に対する危機管理体制を構築しており、実績は数多くあります。誰が何を行うか、お客様やパートナー企業に対してどう対応するかをすべて規定しています。しかし、それは当社にとって通常のビジネスで想定している危機管理体制、緊急連絡の仕組みです。このため、今回のような想定外の危機では、初動までに時間を要した部分もありました。
しかし、危機管理体制、とくにサポートセンターに関しては、アウトブレークのノウハウが活きました。突然のウイルス発生は、土日、深夜に関係なく発生しますので、緊急時の連絡体制やコミュニケータのアサイン、臨時のフリーダイヤルの取得手続きなどは、アウトブレークのノウハウに従っています。ただ、当社のサポートセンターは、基本的にテクニカルサポートやヘルプデスクを行っているため、コミュニケータはエンジニアが中心です。今回のようにお客様からお叱りの言葉が連続するケースへの対応には苦慮したようです。
――御社のサポート窓口はアウトソーサーの協力を得ている部分も大きいようですが、緊急時の連携はどうなっているのでしょう。
大三川 社外のパートナーとも常日頃から当社のビジョン、ミッションを共有しています。何度もアウトブレークを共に経験していますので、緊急対応の点でも意思統一は図られています。ただ、現場のコミュニケータにおけるストレスは相当なものでした。そこで、今回はさらにこの問題に対応するための特別チームを組織し、既存コミュニケータの支援を行いました。傍にスペシャリストがいるというだけで、現場の雰囲気は緩和されました。一方で、私も直接現場に伺い、事態の説明と労いの言葉をかけ、コミュニケータ1人ひとりに協力をお願いしました。
――モチベーション管理が重要ですね。
大三川 このような緊急事態においても、やはり重要なのは人間としての「気遣い」ではないでしょうか。コミュニケータには我慢強い人が多く、ストレスが溜まっていてもなかなか報告しない傾向があると思います。そのため、現場を冷静に見て状況を判断できる管理者が必要です。今回、上手くいったと思うのは、現場のマネージャーが冷静に事態を把握し、逐次報告してきた点です。そのおかげで、人材の追加投入などの施策を的確に打つことができました。一般的に考えれば、マネージャーとしてはまず目の前の電話を処理することを優先しがちで、全体の状況を読み取れずにパニックになる可能性もありました。しかし、過去数回のアウトブレークの経験から、緊急時でも冷静に状況を見る目が養われていました。
ドライな言い方をすればアウトソーサーには業務委託契約を行い、対価を支払っているので、やってもらって当然という考え方もあります。しかし、それは違います。普段からビジョン、ミッションを共有し、当社のストラテジーまで理解してもらっているからこそ同じ方向に向かって力を合わせていけるのです。お互いに認め合い、感謝することで、緊急時でも強力な連携ができたと言えます。
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