大三川 “予兆”を感じ取るための仕組みと社員の意識改革です。緊急事態が発生してから体制を作るのでは従来と変わりません。特定のユーザーからの問い合わせが来る、ある質問が急に増えるなど、わずかな変化にアンテナを張り巡らし、“予兆”を捉えたならば、サポート、開発、営業など各部門と情報共有していく。それにより、何も問題がなければそれはそれで良い。しかし、実は大問題に発展するかもしれない事態と判断すれば、予兆段階で手を打つことで危機を未然に防ぐことも可能になります。冒頭でお話ししたように、今回の事故においては、コミュニケーションが大きな課題でした。“予兆”の段階で全社的に連携し、対処できていれば事故の影響は最小限に防げました。
意識改革を行うには、訓練を繰り返すことです。緊急事態に備えるという意味では、消防訓練と同じです。ビジネスを推進するなかで、どんな小さな変化でも訓練としてレポートし要因を追求します。日常的にこれを行えば、実際の“予兆”も高感度で捉えられるようになると考えています。
セキュリティパートナーを揃え
オンサイトサポート力を強化
――今後の課題を教えて下さい。
大三川 CRMの強化とユーザーサポートの領域拡大です。当社は、ネットワーク社会の中でウイルスの脅威からシステムを守る役割を担っています。とくに当社は、企業向けのネットワーク・ゲートウエイのセキュリティソフトで世界的にシェア1、売上比率でも7〜8割が企業ユーザーと、BtoBのビジネスが非常に重要です。一方で、インターネット普及の半面、ウイルス対策は高度化し、とくに中堅・中小企業のお客様の中には自社だけでは対処しきれない脅威も生まれています。そこで、全国各地のパートナーと協業し、いざという時にオンサイトでサービスを提供できる体制を整備していきます。もちろん、法人だけではなく個人ユーザーに対しても、電話サポートを365日体制にしたり、オンサイトサービスのプログラムを展開するなど対応力強化を図ります。今回の件を教訓に二度とお客様にご迷惑をおかけしないようリスクマネジメントで危機を回避し、クライシスマネジメントで緊急時の対応を最適化することで万が一の事態に備えます。お客様の資産を守るセキュリティベンダーとして、すべてのインターネットユーザーが安心してネットワークを利用できる環境の実現に向けて努めて参ります。
(聞き手・山本 浩祐)