派遣社員はその道のプロ
パートナーとして評価する
――コールセンターは、複数の雇用形態が混在することが特徴です。とくに派遣社員のマネジメントには難しさが伴います。
井上 派遣社員は、単に派遣された人材という認識ではなく、その道のプロのスキルを対価に応じて提供してくれる重要なビジネスパートナーだと考えています。コールセンターは非常に専門性が求められる職場であることから、プロである派遣社員の活用がマッチしていると思います。当社のセンターでもコミュニケータの90%強は派遣社員ですが、常々ビジネスパートナーとして接しております。
――人材の安定確保のために正社員化の流れもありますが、御社の場合は。
井上 キャリアアップできる土壌作りは必要だと思います。専門的な能力・スキルをきちんと評価し、処遇に反映しなければなりません。ただし、専門志向が強い派遣社員のなかには、異動命令もある正社員という雇用を好まない人もいます。ですから一概には言えませんが、当社でも優秀で意欲の高いコミュニケータには正社員のキャリアパスを示し、実際他部署で働いている人もいます。
管理者の役割は“実績を上げる”こと
レポートと現場のハンドリングが重要
――ご自身の体験を踏まえてコールセンター管理者に不可欠な要素は何だと思われますか。
井上 とにかく“継続して実績を上げる”ことです。
当社の場合は成約率が主な評価軸です。また、処理件数や通話時間、成約につなげられる情報提供を何件できたか、営業部署にフィードバックできる情報がどれくらいあるかということもセンターの実績を評価するポイントになっています。実績とは、直接的なプロフィットでなくとも構いません。経営貢献したことを数値レポートとしてしっかり示せることが重要です。
――実績を上げるためのポイントを教えてください。
井上 まず経営層から指示されたコールセンターの役割やミッションを現場のスタッフ各人の意識として浸透させることが欠かせません。これは1度きりでなかなか伝わるものではなく、毎日常に伝え続けなければなりません。なお、シフト制度をとっているセンターでは全員を集めて情報を伝えるということが難しいので、指示は必ず紙ベースで行い、漏れなく伝わるようにすることが大事だと考えています。また、稼働率や通話時間といった数値に敏感になることも大切です。異常値の把握から、センターの問題点やトラブルを起こしそうなコミュニケータの存在が浮き彫りになります。例えば、ACW(アフターコールワーク)が異常に長いコミュニケータの仕事ぶりを観察すると応対履歴に不必要なことまで書いていたりします。数値からビジネスチャンスを見出すことも可能です。例えば、天気と成約率の相関関係を見出して、雨の日は在宅率が高くアウトバウンドの効果が高まるということがわかれば、雨の地域を中心に発信すれば効率よく実績を出せます。
――上げた実績をレポートとして経営層に示すとのことですが、その方法は。
井上 呼量や成約率などの数値変化は業績を左右するものですから、必ず数値で出します。その方が説得力が出ます。ただし、センター運営に精通していない経営層も多いでしょうから、その数値変化がどうビジネスに影響するかもレポートで説明します。こうしたレポートを励行すれば、例えば週末に提出すると、翌週には商品企画や販売/広告戦略に活かすことができます。センターマネージャーは経営層の考える事業戦略を現場に落としこみ、現場から生まれる成果・実績を経営層にフィードバックするのが使命です。これを怠らず実践することで、必ず脱コストセンターを実現できるはずだと考えます。
(聞き手・石川ふみ)
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