カラオケ機器は、8トラック(カセットテープ)、レーザーディスク、通信カラオケと音声記憶媒体やシステムの進化に沿って成長を遂げてきました。弊社は8トラックの時代から事業を続けている唯一のカラオケ専業メーカーです。現在、国内で稼働する業務用カラオケ機器は約40万台で、弊社は50%を超えるシェア(第一興商調べ)を獲得しています。
参入企業が相次いで最も市場競争が激しかったのは、1990年代前半の通信カラオケ初期の時代です。当時の機器メーカーは14社にのぼりました。理由は、デジタル化により音声データの制作負荷が大幅に軽減されたことにあります。8トラックの時代はスタジオでプロのミュージシャンが演奏し録音していました。これに対し、データ配信する楽曲はより少人数で短期間に作成可能です。しかも、当時はアナログ回線を利用していたため少量ファイルのMIDI形式でしか送受信できず、楽曲の制作ができれば参入が可能でした。しかし通信インフラの整備とともに、より音質の高い楽曲の作成や動画配信などを行えるようになったため、開発力・競争力のないメーカーは淘汰され始めました。現在は、弊社を含む3社に絞られています。各社がコンテンツを10万曲ほど揃えた今となっては、よほどの技術革新がない限り新規参入も難しい業界となっています。
熊谷 その結果、ハードウエアの機能は大きく進化しました。通信カラオケ機器は最初500メガバイトのハードディスクで稼働していたのですが、最新機種では多くの映像やコンテンツを格納するため1.5テラバイトの容量になっています。また、周辺機器の機能も複雑化・高度化しています。曲数やコンテンツが増えたことでタッチパネル式の検索機能がついたリモコンを開発したり、インターネットや無線通信が可能な機種もリリースしました。こうした技術革新が、今度は高度なサポートサービスの需要につながっています。
通信カラオケの技術高度化で
ヘルプデスク機能の必要性が増した
――ハードの機能強化によって、操作性も複雑になったような印象を受けます。そこでサポートの役割が重視されつつあるということですか。
熊谷 機器の納入・設置や故障・トラブルの対応など、ユーザー(店舗、カラオケ店)との直接的なやり取りは全国約900名の営業マンや約200社の販売代理店が担当しています。しかし、ネットワーク技術が高度化するにつれ、営業マンや代理店の技術力・知識だけでは対応が難しい案件が増えてきました。彼らの二次的支援を担う役割が必要になり、1990年代中盤に数人規模のヘルプデスクを設置しました。
熊谷 現在の月間呼量は約1万件で、17名のオペレータが応対しています。開設時間は、10時〜22時。発信者の95%が営業マンや販売代理店といった業者で、コール内容は業務用カラオケ機器の保守保全にかかわるものです。このため、コールピークは開店時間や開店直後にあたる夕方前後になります。
――ユーザー(店舗)からの問い合わせを直接受け付ける窓口にする予定はありますか。
熊谷 具体的な計画としてはありません。窓口をユーザーに開放すると呼量は爆発的に増えるでしょうし、専門用語を使った対応もできなくなります。例えばオペレータが「モデムのスイッチを入れてください」と伝えたときに、モデムがどれなのかお客様に理解できるかというハードルがあります。
実際に現在もっとも頭の痛い課題が、用語やトラブルの説明方法が統一されていないということです。営業マン・代理店には操作方法や基本的なトラブル対応に関することを記載したマニュアルを配布していますが、ご覧いただけていないケースもあります。用語が通じず説明に手間取ると、どうしても対応は長引きます。このため、問い合わせの多いトラブル対応については講習会を開いたり、マニュアルを読みやすく改善するなどしてナレッジ共有が浸透するよう力をいれています。