――アナログからデジタルへ、コンシューマーエレクトロニクス製品が大きく変わるなかで、顧客対応にも変化がありますか。
打出 メーカーの立場で言えば、デジタル化やソフトウエア化により、かつてのように製品そのもので他社と圧倒的な差異化を図ることが難しくなっています。一方、お客様の目線で考えると、製品の楽しみ方が従来の単機能でシンプルな操作から、デジタル化によって多機能になり操作も複雑化しています。また必然的にネットワークに接続していくことで、新製品・既存製品を含めた他製品や各種アプリケーションとの接続、操作法という新たな問題も多くなっています。メーカーとしてはネットワーク連携や機能追加を付加価値として次々に訴求しますから、お客様にとってはますます使い方が分からなくなり、デジタル化の比率が高まるとともに問い合わせやひいては不満が増え、かつその内容が多様化しているという状況です。
――新会社設立(4月1日)の目的は、この変化に即応することにあったということですか。
打出 そうです。従来のサポート体制は、製品の購入前の問い合わせ窓口である「お客様ご相談センター」をソニーマーケティングが管轄し、購入後の使い方相談や修理窓口はソニーイーエムシーエスが担当していました。新会社では、これらの機能および人員を統合し、一元的なオペレーションを実現することで、お客様にワンストップソリューションをご提供するのが第一の主眼です。ソニーは技術・開発志向が強く、これまで製品そのもので差異化を図り、市場に送り出してきました。しかし、これからは購入前の買い物相談や購入後のアフターサービスを含めたお客様の安心感、信頼のサイクルが、製品とパッケージになってソニーの商品力が形成されるということが、コンシューマーエレクトロニクス製品においてもますます強まるでしょう。私はカスタマーサポート力がこれからの製品差異化の新たな決め手として重要な部分を占めると考えています。
期待値が高い分だけ反動も大きい
組織統合でシームレス対応を実現へ
――従来のカスタマーサポートでは不十分であったと。
打出 決してそうは思っていませんが、おかげさまでソニー製品やブランドに対しお客様から高いご評価をいただいているだけに、カスタマーサポート、アフターサービスへの期待値も高いものがあります。当方では徹底しているつもりでも期待値が高いだけに反動もまた大きい面があるのは確かです。例えば、オペレーションの流れで言いますと、購入前の買い物相談から購入後の使い方相談、さらに修理を含め、お客様からみれば『ソニー』でシームレスに繋がっているのです。ところが、従来の体制ではIVRの一次切り分けでシステム的には一元化できているのですが、振り分けられた先の有人対応は購入前と後で組織(会社)が違っていたために、お客様が誤って番号を選択した場合は、お客様にかけ直しをお願いしていたのです。まして、使い方の多様化・ネットワーク化によって、購入前(新製品)と購入後(既存製品)とで相談が輻輳するケースもますます増えるだけに、新会社でオペレーションの一元化を図り、応対のシームレス化を進めているのです。
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