――米国に端を発する金融不安は世界市場に波及し、いまや国内にも大きな影響を与えています。リテール(個人)を取り巻く環境はどのような状況でしょうか。
吉本 実体経済が悪化しているため、ビジネスは非常に厳しいと言えます。実際、不動産業や自動車をはじめとした製造業などで倒産や規模の縮小が相次いでいます。このことは、リテールのお客様にも大きな影響を与えています。銀行としては、こうした状況においても、お客様との関係強化を図りながら、業績を上げていかねばなりません。ただ、こうした今回の金融不安が起こる以前から、銀行を取り巻く環境は激しく変化しています。
――それは銀行と顧客の関係性が変化してきたという意味でしょうか。
吉本 まず、CSR経営の強化が世界的な潮流となっており、社会貢献活動などへの取り組みのみならず、本来業務における消費者保護・投資家保護という観点からのコーポレートガバナンスの抜本的な改革が求められています。また、2007年の規制緩和による、証券・生損保などの投資性商品を中心とした金融商品の窓口販売の解禁も大きな転換点でした。お客様は資産運用に高い関心を持たれており、当行としても「貯蓄から投資へ」という金融活動の変化に対応していかねばなりません。金融商品の拡大は、手数料ビジネス強化を目指す銀行にとって大きなチャンスです。このことは、お客様と銀行の関係密度が増すことを示し、行員に求められる業務量や知識が飛躍的に高まることを意味します。
一方で、金融危機以降は、銀行の体制を建て直し、健全化を図るべく、営業店はリストラを敢行して人員削減に努めてきました。このため、リテール/法人ともに、お客様対応ができる行員が減少しているという課題があります。ただし、最近は店頭窓口よりも非対面チャネルのトランザクションが急激に伸びており、今後、銀行が攻めの経営に転換していくには、事務処理(バックオフィス業務)の効率化や非対面チャネルの集約によるサービス強化が不可欠です。そこで、2006年より段階的に、行内の抜本的な体制の見直しを図りました。
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