――在宅オペレータに関連する市場を、どのように捉えられていますか。
中岡 まず先行する米国市場の話をしますと、現時点での在宅オペレータ数は約15万人で、2012年には33万人にまで拡大すると予測されています。また、フォーチュン500の35%が採用しています。IDCやガートナーなどのレポートでも今後、急速に伸びる分野とされており、勢いは止まらないと見ています。
――米国の普及には、どのような背景があるのでしょうか。
中岡 いくつか理由がありますが、大きくは品質とコストの最適化です。かつて米国企業は、国別賃金格差を利用してコスト削減を図るため、インドやアイルランドなどにオフショアセンターを構えました。しかし、応対品質の問題やマネジメントの困難さ、想定したほどコストメリットが出ないといった理由で、コールセンターを本国に戻しています。そして次に取った手段が、働き方の違いによる賃金格差の利用でした。これは家庭にいる潜在的な労働力を活用するもので、“オフショアリングからホームショアリングへ”という大きな流れを生みました。これを支えたのがIP電話技術の進化です。ホストセンターに入るコールを柔軟に転送し、遠隔地からでもオペレーション管理が可能な技術を確立、在宅向けプラットフォームとして展開する専業ベンダーが台頭し、既に10社近くがサービスを提供しています。時代の要請と技術の確立が、在宅オペレータの普及を加速させているといえるでしょう。
――日本国内の場合はいかがでしょうか。
中岡 日本では現在、地域別賃金格差の利用を狙ったニアショアリングが主体ですが、都心と地方のオペレータの時給格差は平均200円程度しかありません。このため、国内でも働き方の違いによる賃金格差を利用したコスト削減に期待が集まっています。一方で優秀人材の確保も重要な目的です。政府統計では、4年生大学を出て一般企業に就職した女性のうち、結婚して第一子を産んだ人の就業継続率は23.6%、逆算すれば76%の社会経験を積んだインテリジェンス層が家庭に埋もれている状況です。この数千万人にのぼるであろう潜在力を掘り起こし、在宅オペレータとして顕在化して活用したいというニーズが生まれています。
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