セキュリティ・品質・労務管理――
在宅活用の不安はITで解決できる!
――在宅制度への関心が高まる一方で、普及を阻む要因としてセキュリティ面を懸念する声が多いようです。また品質・労務管理にも不安を覚えるようです。
中岡 簡単に言えば、すべてITでカバーできます。当社の在宅向けプラットフォーム「HooooPs」で説明すると、オペレータ業務に必要なシステムはすべて指紋認証付きUSBメモリで貸与します。これは、LinuxベースのOS、ソフトホンやウィンドウズ・エミュレータなどのアプリケーションを搭載し、オペレータの自宅パソコンのUSBポートに差し込んで電源を入れるだけで、シンクライアント化した業務端末になります。業務アプリケーション自体は、セキュアな環境に守られたホストセンターで稼働し、エミュレータを通じて端末に表示します。パソコン自体のハードディスクや外部記録媒体、プリンタなどは一切利用できないので、情報出力はディスプレイのみとなります。一方、勤務状況の視認では、Webカメラを利用します。これは執務風景の確認のみならず、画像認識技術を使ってメモ取りやカメラ撮影などの不審な行動を監視し、離席の際は第3者の目に情報が触れないよう画面をブラックアウトします。これらの技術に加え、当社ソリューションはISMS認証も取得し、公的にもセキュリティ対策を保証しています。
応対品質管理では、遠隔モニタリングやメッセンジャーによる支援、エスカレーション対応、通話録音など、コールセンターで利用される機能を一通り提供しています。指向性マイクを使ったヘッドセットでのノイズカットも可能。また、スケジューリングや就業管理、給与計算のアプリケーションも揃えています。
――技術的に可能なのは理解できます。しかし、いざ導入となると尻込みする企業は決して少なくないと思いますが。
中岡 米国と日本の違いで最も大きいのは“横並びの精神”です。米国は、良いものは他社に先駆けて導入して競争優位に立つという文化があります。しかし日本企業は、他社がまだやってないのなら時期尚早という考え方をします。大手企業ほどこの傾向が強く、“人柱”にはなりたくない。しかし、最初の企業が上手くいけば、追随する企業が出ると睨んでいます。幸いなことに、当社ソリューションは、AIGエジソン生命保険様に採用いただき、第1号ユーザーになっていただけました。セキュリティに厳しいと言われる金融業で在宅オペレータを導入するということで、俄かに市場の関心も高まり、問い合わせも増えています。これまで興味はあったものの具体的な検討までは行ってこなかった企業が、ちょっと調べてみるかという気になってきたことは良い傾向だと感じています。
在宅へのシフトで運営コストは半額!?
不況時代に期待高まる費用対効果
――在宅制度導入の動機はいろいろあると思いますが、ニーズとして多いのは何でしょうか。
中岡 大きく2つのトレンドがあり、1つはコスト削減への期待です。昨年来続く経済不況の中、コールセンターへの投資も厳しくなっています。このため、冒頭で述べたように働き方の違いによる賃金格差を利用してコスト抑制したいと考える企業が多いのです。当社の試算では、在宅オペレータの活用で従来の運営コストを50%削減できます。センターのコスト構造は、7割が人件費で残り3割が地代・設備・その他費用です。そして人件費のうち約35%は交通費や法定福利厚生費になります。在宅オペレータの時給はセンター勤務者とそう変わりませんが、全体で35%は削減できる見込みです。また、在宅向けプラットフォームを活用すれば設備費用は15%カットできます。
もう1つのニーズは、BCP(business continuity plan)への対応です。今春から続く新型インフルエンザの騒動を受けて、企業の事業継続性が問われるようになりました。BCPを策定していない企業は、今後生き残れないとまで言われます。コールセンターは顧客接点であり、24時間365日止められない業務を実践する組織です。生損保の死亡・事故受付やカード会社の紛失・盗難届けなど、非常にミッションクリティカルな業務を抱えている金融業を中心に、BCP対策としての在宅オペレータ活用に期待が高まっています。現在のところ、問い合わせの7割がBCPに関するものです。
|