当面、日本ピープルソフトとしては、どのような切り口で“効果”を訴求していく方針なのですか。
加賀山 ヒューマンリソース管理(HCM)、サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)といったバックオフィス系のソリューションとの連動による相乗効果を強力に訴求していきます。
多くの企業にとって、ビジネス上の課題がCRMの実践だけですべて解決することはありえません。とくに、スピードアップが要求されている経営判断や、情報の共有化、管理職業務の軽減には、バックオフィスまで含めたトータル・ソリューションの構築によって情報の流れを円滑化する必要がありますから、これらをすべて提供できる強みは活かせると考えています。
具体的には、人材管理ソリューション「Peoplesoft HCM」や、財務・管理会計ソリューション「Peoplesoft FMS」のユーザー企業様に対して、「Peoplesoft8 CRM」のヨコ展開を図る方針です。
販売契約の形態を2種類用意
幅広いチャネルの再構築を目指す
Peoplesoft8 CRMは、少なくとも国内では、まだ「Vantive」ブランドのイメージが強く残っています。端的に言うと、これまで前面に出て市場に訴求してきた三井物産の三井Vantiveセンターの影響力が非常に大きい。(2002年末で)同社との契約が終了すると聞いていますが、その後のイメージ転換についてはどのような施策をお持ちですか。
加賀山 Vantive製品の既存のお客様にサポートを提供するために、これまでVantiveのリセラーだった13社のパートナー様には、当社と直接契約を結んでいただきます。3年前のバンティブ買収後、国内では三井物産様にリセラーの管理をアウトソースする形で、(買収後の)スムース・トラディションを図っていましたが、今後は当社が前面に出てPeoplesoftブランドの定着を図る方針です。Peoplesoft8 CRMの販売・サポートに関しては、リセラー契約に加えてセールスパートナー契約の2通りを用意しています。
その違いはどのようなところにあるのですか。
加賀山 リセラー契約は、契約時に事業計画を提示していただき、ある種のノルマをもっていただきます。そのノルマに対し当社が対価をつけます。販売に関しては基本的にこれまで通りで、当社は仕切り価格を提示してお客様への値段付けはパートナー様にお任せします。
つまり、リセラー各社にライセンスを提供して、リセラーはエンドユーザーにサブライセンスを発行することになります。まだ流動的ですが、既存の13社のパートナー様は、ほとんどがリセラー契約を結ぶことができると考えています。
一方、セールスパートナー契約は、お客様との値段付けを含めた販売契約は当社が行い、パートナー様には手数料をお支払いする形態になります。“サブライセンス”という考え方をお持ちでないSI各社にとっては、敷居の低い形態といえます。
コンサルティング部門を強化し
プリ/ポストセールスの前面に立つ
イメージ面での“脱Vantive”は今後の大きなテーマとなりそうですが、そのメリットとデメリットについてはどのようにお考えですか。
加賀山 (Vantiveの)ブランドイメージが定着しているため、CRM市場での“Peoplesoft”ブランドの育成には相当の労力と時間がかかると覚悟しています。既存のユーザー企業の方々ですらVantiveの販売元がピープルソフトだと認識されていないところが多いくらいですから、まずはパートナー各社との連携を強めて、同時にプリセールスの段階から当社の営業・コンサルタントが前面に出ていく必要があるでしょう。
しかし、Vantive時代にはできなかったトータルソリューションの提供が可能になるメリットは大きいと考えています。先ほども申し上げましたが、ERPやSCMとの連動はPeoplesoft8 CRMの大きなウリです。実際に米国では、ここ数年の売上げの約75%が、お客様へ他ソリューションをクロスセル/アップセルしたものです。言いかえれば、これを武器にブランドイメージの転換が可能と考えています。
13社以外へのパートナー拡大には着手しないのですか。
加賀山 これまでも個々の案件ごとの契約として、例えばNEC様や日本IBM様と協業することがありました。そのような大手ベンダー各社を中心に、いわば“非Vantiveグループ”へのチャネル拡大は働きかけていく方針です。
米国同様、メーカー直販の可能性はないのですか。大手CRMベンダーでは着手したところもありますが。
加賀山 確かに、直販が当たり前の米国本社から見れば「(日本は)なぜこんなに販売のレイヤーが深いのか」という考えが生まれるのは自然なことでしょう。しかし、日本の場合はチャネルを重視することが、ビジネスの拡大にもつながると考えています。
とはいえ、すべてお任せにするつもりはありません。セールスに関しては積極的に直接お客様まで働きかけていきます。
では、ピープルソフトのCRM部門の人員もさらに必要になると思われますが。
加賀山 とくに、プリセールスに注力する関係上、コンサルティング部隊をさらに充実する方針です。現在、言わば三井Vantiveセンターに代わる存在を当社が設立することも検討しています。これは、既存ユーザーのサポートにも必要な要素だと考えています。
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