それぞれの会議の役割を具体的に説明してもらえますか。
佐藤 CS会議については週1回経営企画部を軸に顧客サポート、システム、コンプライアンス(法令遵守)、営業推進の計5部門合同で実施し、私が部長補佐らとともに事前に選定した議題を討議します。ただCSの観点のみでは結論がどうしてもお客様側のニーズに偏りすぎてしまうため、そこにビジネスの視点を反映させようと、翌日営業推進部主体で営業部門会議を開き、再度別の角度から検討しています。
営業推進部の幹部には、旧4大証券でトップセールスを記録するなどビジネスセンスに長けた人材が多く、この段階で商品化の最終決定がなされることも少なくありません。むろん全てがそうというわけではなく、前述しました信用取引の無期限サービスなど、会社側に多大な財務リスクが生じるような案件については、その後の取締役会で徹底的に討議されます。
商品化決定後、新規にメニュー化するまでのフローはどうなっていますか。
佐藤 基本的にはシステム部門の手でWebに反映するわけですが、最近は投資効率を図るため、まず実験的にサポートダイヤルで注文を受け付け、ニーズの高さを検証したうえでWebシステム化する形式が一般的となっています。そもそも40〜60代を主軸とする当社のお客様はITに不慣れな方が多く、問い合わせの約7割は電話経由です。今後もWebFAQの充実を図る一方、電話チャネルを有効活用していきたいと考えています。
顧客ごとに専用ページを設定し
個別に有益情報を提供
CRMというと(2割のユーザーが8割の需要を占めるという)ニッパチ理論が一般化しています。既存の10万口座を取引高に応じてセグメント化し、特定会員を優遇するなどの取り組みは行っているのですか。
佐藤 Webログ調査をもとに使い勝手の悪いWebインタフェースを改善したら、結果的に取引高の多い優良のお客様の便宜を図っていたなどの例はしばしば見受けられますが、事前にランク付けしてサービスの品質を変えることは一切行っていません。先ほどお話したように、オンライン取引はまだ全株式市場の1割に過ぎず、各社はその限られたパイのなかで会員の争奪戦を行っているわけです。実際、お客様は少なくとも上位5社すべてに口座を開設し、レスポンスの速さやカスタマーサポートの是非などを比べて発注先を決めている方が多いのではないでしょうか。そうした状況下、ロイヤルカスタマーうんぬんの戦略を展開してもいたずらに商機を狭めてしまうだけです。
ニッパチ理論はもっともですが、これは当社が既存のオフライン証券と肩を並べるような規模に成長してから実践すべきことです。現状ではオンライン証券市場そのもののパイを拡大することが最優先であり、そのためにサービスを均質化する必要があるのです。
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