横山 2005年5月にCRMシステムを導入、顧客情報を一元化し、営業店やコールセンターなど各チャネルで情報を共有、相互利用できるようにしました。具体的には、従前のプッシュセールス的な手法を抜本的に改め、金融リテラシー(金融知識・経験度合い)とリスク選好度の2軸でお客様をセグメントした上で、お客様ごとにフィットした商品・サービスを提供しています。本社の金融基礎研究所では各種アンケートデータを分析し、お客様の取り引き状況などと紐付けして推測したセグメント情報を、CRMシステムを通じてお客様接点の営業店やアウトバウンド・インバウンドのコールセンターに環流することで、ワン・トゥ・ワンの営業展開を志向しています。
――ワン・トゥ・ワンの取り組みが進めば、CS度アップにも寄与しそうですね。
横山 銀行のCSをどう捉えるかはなかなか難しく、最も即効性があるのは金利や手数料ではないかとも言われています。当行でもネットバンキングの手数料(個人の他行振り込み)が安いといった料金そのものの差別化はもちろん図っていますが、一方で2005年4月に社長直属のサービス改革本部を設置し、待ち時間ゼロ運動をはじめ、ホテルや航空会社などのサービス業経験者を中途採用しCSアドバイザーとして配属させるなど、改めてCS向上施策に地道に取り組んでいます。
ネット隆盛でもコールは減らない
東京・大阪・島根センターをIPネット化
――ダイレクトバンキングの状況は如何ですか。
横山 株取引でネット証券が隆盛なことに象徴されるように、インターネットの普及、利用拡大によってネットバンキングも取引件数、金額共に伸びています。その分、テレホンバンキングが減っているかと言うとそうでもなく、高年齢層を中心に依然増えている状況です。テレホンバンキングサービスを昨年5月のシステム一新を機に見直したことも効いています。従前の契約制サービス(事前に申込書へ署名・捺印が必要)を「コミュニケーションダイヤル」という形で、お手持ちのキャッシュカードの暗証番号で本人認証を行い、事前契約なしでも電話で取引できるようにしました。またサービス内容についても、新たに住所変更をメニューに入れ、投信、外貨預金についても取引できるようにしました。保険やクレジット会社では電話での住所変更が既に当たり前ですが、銀行は本人認証面が難しく、この部分の取り組みは出遅れていました。しかし、新サービス開始後短期間のうちに、住所変更の10%以上、地域によっては20%以上が電話経由になり、営業店の事務処置効率化に結び付いています。
――テレホンバンキングをはじめとするコール量は。
横山 インバウンドで年140万件以上、月間約12万件のトランザクションがあります。このうち、70%〜80%が無人(IVR)、20%〜30%が有人対応です。
――電話を中心としたカスタマーサービス拠点として、コールセンターの体制はどのようになっていますか。
横山 新CRMシステム、サービス見直しをベースに、コールセンター・システムについても一新し、2005年8月、島根県出雲市に新たなカスタマーセンターを開設しました。従前の東京、大阪センターを合わせ3拠点をIPネットワークでバーチャルに統合、IVRで一次受付したコールを3センター間で呼量に応じて転送、さらにスキルベースルーティングを行っています。目下、インバウンド業務は島根センターへの集約を急速に進めている最中で、アウトバウンド主体の東京、大阪センターとの役割分担を図っています。運営形態はインハウスです。かつてコールセンター業務をアウトソースしていた時期もありましたが、新システム移行を機にインハウス主体にしました。CRMシステムに基づいた営業推進の最前線という観点からも、やはり自前で運営しなければ機能しないと考えたからです。