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プッシュ型からセンス&レスポンス型へ
「Event Based Marketing」を提唱
――(2002年頃に)CRMに対する期待や需要が冷え込んだ理由について具体的にお聞かせください。
浅野 主に2つの理由があると考えています。1つは、当時、多くの企業が実践していたCRMは、顧客視点が欠如していたという点です。商品・サービスの単体分析にとらわれるあまり、複数の商品・サービスを組み合わせて利用する顧客の立場に立っていなかったり、コンタクトセンターにおいては生産性重視のKPIが設定され品質面の指標が落ちてしまったりということがありました。
もう1つの理由は、顧客戦略に基づいた組織やビジネスプロセス、各部署の機能・役割などがきちんと定義されないままCRMを実践しようとしたことです。例えばコールセンターは、会社の中での事業戦略上のミッションや位置づけがあいまいなまま構築されてしまった。売上拡大に寄与すべきか、徹底的に顧客離反阻止を目指すべきかといった、そもそもの開設目的すらあいまいなのですから、これでは、効果が出るはずがありません。コンサルティング・ファームやITベンダーは、こうした真の課題を踏まえてソリューションを提案する必要があります。
――市場が再び活況を取り戻しつつあるということですが、この2つを課題として捉える傾向が進みつつあると考えていいのでしょうか。
浅野 調査会社のガートナージャパンによれば、2000年頃のCRM市場は「営業支援」と「カスタマーサービス」の2つの領域にスポットがあたっていましたが、ここ数年、急成長を遂げているのは「マーケティング」や「ビジネスインテリジェンス」で、いずれも市場規模が数倍になると言います。これらの調査結果は、CRMがより高次元のレベルで経営戦略に組み込まれつつあることを表しています。コールセンターのミッションに関しても、単なる顧客接点ではなく、“マーケティングの拠点”という見方が強まっていると思われます。
――そのような現状を踏まえ、御社はクライアント企業にどんな提案を行っていますか。
浅野 さきほど、顧客体験を重視したCRMを実践すべきだと申しあげましたが、その具体的な方法の1つとして提唱しているのが「Event
Based Marketing(EBM)」です。EBMでは、顧客が企業に対しアクセスする瞬間をすべて“イベント”と捉え、そこで顧客が何を体験しているかを分析することで、最適なサービスを最適なチャネルで提供することを目指します。例えば鉄道業界の場合、従来型のマーケティングでは顧客接点を「電車の中」に限定して、その地域と顧客属性などをもとにマーケティングを展開していたと思うのですが、実は顧客への接点は非常に多いのです。券売機による切符の販売、改札、事故が起きた場合の情報掲示やWebによる告知など多岐にわたります。従って、それぞれの接点において、顧客が何を体験し何を要求しているのかを分析し、最適なサービスを最も好まれているチャネルから提供するわけです。具体的には、すでに行われてはいますが、乗車中にインターネットができるよう無線LANを備えたり、メールマガジンサービスを展開する、駅構内の飲食店を充実させる、乗車券のIC化にともないクレジットカード事業を展開するといったことも、EBMに基づく考え方を行うことで、それぞれのサービスを有機的に連携しスムーズに展開することができます。
――EBMを実践する際のポイントはなんですか。
浅野 従来型のワン・トゥ・ワン・マーケティングが、こういう顧客にはこういう商品・サービスを提供すればいいとする「プッシュ型」であるのに対し、EBMは顧客の期待やアクションに対して最適な対応をとる「センス&レスポンス型」です。顧客の体験を細かく分析し、そのときどきに顧客が必要とするものを感じ取り、応えられる商品・サービスを開発する、という一連の活動を指しますので、常時PDCAサイクルを回し、時流や顧客の期待の変化に合わせて改善を繰り返すことが重要になります。
PDCAの反復に加え重要なのが、顧客戦略とIT投資計画、業務施策、オペレーションフローなどを一貫させることです。マーケティングの組織と営業やコールセンターをはじめとしたオペレーション組織が分断された社内の“縦割り構造”があると、EBMは失敗に終わります。EBMの結果をもとに業務を行い、業務結果からまた顧客体験を抽出・分析しEBMに活かすというサイクルを企業全体で回すことで、初めて顧客満足や顧客ロイヤルティの獲得といった結果が得られるのです。
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