働き方のニーズ多様化に合わせ
シフト構成の柔軟化を検討
――コールセンターをはじめ、労働集約産業では、コスト・品質という相反する2つの課題の追求が永遠のテーマといっても過言ではありません。これに関する、御社の具体的な施策は何ですか。
山ア 両者は、決して逆のアプローチで追求されるものではないと思います。結局、実際の業務を行うのは“人”なので、コールセンターで言えば、オペレータの業務スキルを高めることが、コスト・品質いずれのテーマにも応えられる施策だと考えています。業務効率にしても応対品質にしても、一般的に業務スキルは習熟度の高さに比例しています。つまり、“長く勤めてもらうこと”こそコスト・品質の両課題に対する答えになるのではと考えています。
――人材の定着化は、人不足に頭を抱える企業が挑む、難易度の高い課題のひとつです。とくに、昨年以降は景気回復に伴う人不足が深刻化し、1990年代後半以降に市場を拡大させたコールセンター業界は未体験の労働市場環境(人材売り手市場)におかれており、雇用の問題がより注目されています。
山ア 人不足といっても、本当に人がいないわけではありません。働き方に対する価値観の多様化が進んでいる現状に対し、企業の人事制度改革が追いついていないことが本当の問題ではないでしょうか。
当社は、これまで4時間単位の勤務制度やパートタイマー向けキャリアパスの構築などの施策をとることで、首都圏にセンターを構えながらも、着実な人材獲得、ローコストオペレーションを実現してきました。しかし、今後は成功を納めてきたこの手法にとらわれることなく、さらに人事制度をブラッシュアップすることが必要だと考えています。具体的には4時間という枠組みのみならず、3時間勤務や6時間勤務、週休3日制のシフトなどを模索し検討しています。
ただし、働く側の都合に合わせたシフト作成は、安易に展開すると現場の管理者の負担を大きくすることになります。仕組みの再構築は、現場の状況を見ながら慎重に進める必要があると思います。今のところ現実的な施策としては、例えば5時間働きたいというオペレータの要望に対し、これまでの4時間パート制度と組み合わせて、4時間はA社の問い合わせ対応に従事してもらい、残りの1時間はB社のアウトバウンド業務に従事してもらうというような複数社業務をまたいだシフト管理が考えられます。
――アウトソーサーとして再出発したからこそ実現できる有効策ですね。
山ア クレジットビジネスというのは、各社の事業内容や仕組みに大きな違いがあるわけではありません。このため、複数企業間でのオペレータの業務知識やスキルの横展開がききやすく、先ほどのようなシフト制度も実現可能なものになります。個人情報保護の観点では、情報漏えい防止の仕組み作りやオペレータに対するモラルの徹底はアウトソーサーとして当然行っていますし、業務が1社になるか複数社になるかということでの運営上の違いはありません。
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