CS・ロイヤルティ・プロフィット
3者の関係は『二次曲線』
――顧客視点でサービスのコンセプトを作り、現場をマネジメントすることが重要だということですね。顧客ニーズの把握、顧客満足(CS)の追求は、業種業態を問わず叫ばれて久しいですが、本当に実践できている企業はまだ少ないということでしょうか。
藤川 CSの重要性自体は理解していても、CSとロイヤルティ、プロフィットの相関関係をきちんと把握している経営トップはいまだに少ないと思います。そのため、CS向上の取り組みに着手しても結果が見えず、中途半端なところで終えてしまい、顧客視点でのサービス価値を生み得ていないのです。
CSとロイヤルティ、ロイヤルティとプロフィット――これらの関係は正比例ではありません。それぞれをx軸・y軸にあてはめグラフにすると、二次曲線を描く関係にあります。企業間競争の激しい業界では、CSが高まれば高まるほどロイヤルティに与えるインパクトが大きくなります。逆に、競争の激しくない業界では、CSの低い値での変化がロイヤルティに対し大きな影響を及ぼします。
――ロイヤルティとプロフィットの関係についても同様ですか。
藤川 競争の激しい業界では、ロイヤルティの低い顧客に向けサービス品質を向上しても、せいぜい利用頻度が上がる程度ですが、ロイヤルティの高い顧客をさらに満足させれば、そのサービスを他人に勧めるなど大きな利益拡大につながる行動を起こしてくれます。
――CS・ロイヤルティ・プロフィットの相関関係を考慮すれば、CS調査のあり方も大きく変わってきますね。
藤川 自社の属する業界でCS・ロイヤルティ・プロフィットがどういう関係にあるかを把握したい場合には、通常行っているCS調査に購入1回あたりの単価や購入回数・期間に関する項目を追加するだけでも大体の傾向を把握することはできるので、一度試してみるといいと思います。
また調査結果の活かし方も、CSとロイヤルティ、プロフィットの関係が把握できていれば、当然変わってくるはずです。よくCS調査の推移を平均点で把握する企業がありますが、それはあまり意味のないことです。1から2が10人増えても、4から5が10人増えても、平均点への影響は同じですが、ロイヤルティへの影響度はまったく異なるためです。どのレベルの顧客の満足度をどの程度向上することを目指すのか、それがどのようにプロフィットにつながるのか、を考えることが重要です。
――CS調査がとかく自己満足に陥りやすいのはコールセンターでも同じです。改善には何が必要でしょうか。
藤川 コールセンターの場合、問題なのはえてしてコストセンターという位置づけとなり、むやみにコストダウンに走りやすい傾向があるということです。日々大量の顧客とのやり取りが発生し、しかもそれをログとして残すことのできるコールセンターは、本来、経営戦略上重要な役割を担うべき部署です。電話対応におけるCSへの取り組みが、ロイヤルティやプロフィットにつながることを明確に打ち出せれば、コールセンターが果たすべき役割も自ずと見え、ROIの観点から適正に施策を打ったり投資することが可能になるでしょう。
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