シックスシグマの手法を
サービス領域に持ち込む
――御社のカスタマー・エクスペリエンスを向上させる活動の指標のようなものは。
テオ 社内で「BPI(ビジネス・プロセス・インプルーブメント)」と呼んでいる手法があります。これはデルの文化に根付いているもので、部署や国を超えたプロジェクトチームがカスタマー・エクスペリエンスの向上を目的に、日々の業務を見直し、そのプロセスを改善するプログラムです。現場でお客様と直に接しているスタッフやプロセスオペレーションに携わっているスタッフが、現場から改善していくボトムアップ型の活動手法と言えます。そして、全ての社員がBPI活動を通じてより良い効果的なビジネスオペレーションの仕方を導入することを奨励されます。実際に、BPI活動で成果を上げた社員には、そのプロジェクトに対して表彰制度なども採り入れています。イエローベルトから始まり、新たなプロジェクトに取り組むことでグリーンベルト、さらにはブラックベルトというように表彰のレベルを上げていきます。これはシックスシグマに似ており、まさに「カイゼン」とかQC活動といった製造業での手法をサービス領域に持ち込んだものです。
「サービス」と「コスト」は相反しない
FCR追求で効率を一段と高める
――デルには、効率を徹底的に追求することでコストを抑え、製品を安く提供する、というイメージがありますが、サービスに注力すると効率性と相反するのでは。
テオ IT業界は競合が厳しい分野であり、多くの企業がより収益を上げるためにシビアな取り組みを行っています。サービスとて例外ではありません。重要なのはバランスです。コストとどう折り合いを付け、かつお客様に満足していただけるサービスをいかに“安価”に提供できるかにかかっています。理想を言えば、製品を購入していただいた後にコールセンターに問い合わせの電話がかかってこない、お客様が電話をかける必要のない製品を作りたいとは思っていますが、しかし現実には有り得ず、販売量が増えればそれだけ問い合わせも増えます。1つの解決策として、デルではファーストコールレゾリューション(FCR:一次応対完了率)を指標にし、その向上に努めています。電話を受けること自体、コストがかかることですから、クオリティを追求し、各種ツールを駆使してスキルアップを図ることで、1回の電話で完結したいと強く望んでいます。一方、お客様にとっても1回で解決できれば手間が減るので、CS面でも効果が出る訳です。
――FCRを個々のエージェントの目標にすることで、コストを最低限に抑制できる。これが、ハイクオリティのサービスを安価に提供するという意味ですか。
テオ 誤解のないように申しておきますが、デルは価格競争力のある製品を提供することで成長してきましたが、その分、品質、性能が見劣りするということではむろんありません。事実、製品力の高いノートPCやデスクトップの新製品も投入してきています。「安く」できたのはダイレクトモデルに先進的に取り組んできたからです。これにより、中間マージンを廃し、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)を洗練化し、需給予測をベンダーにまで提供することでパイプライン全体の在庫をコントロールしたりするなど、無駄とムラを徹底的に省いてコストダウンを図ってきました。カスタマーサービス・サポートについても、発想は全く同じです。
――顧客コンタクトチャネルの体制を教えてください。
テオ ダイレクトモデルが基本ですから、一部大手法人向けの対面(訪問)営業を除いて、営業からサポートまで全て電話とインターネット(Eメールなど)で行っています。このため、当社のカスタマーセンターには、「売る前」の営業・マーケティングと、「売った後」のテクニカルサポートが所属しています。テクニカルサポートでは一般的な技術相談からトラブルシューティング、修理受付を担当しており、同業他社のセンターよりカバー範囲が広いかもしれません。お客様とダイレクトな関係を築く拠点として、カスタマーセンターの位置づけは極めて重要です。また、これとは別にWebベースのカスタマーサポートチャネルもあります。
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