松下 プロジェクト自体は、ベルシステム24総合研究所が中心となり、人事部門と協同して動いています。同研究所は、コミュニケーションに関するあらゆる研究を行う中枢機関で、これまで感性消費行動分析サービス「DIAMOND」やマーケティングサービスなどを開発しています。一方、社内のコミュニケーションについても研究を続けており、メンタルヘルスケアも重要なテーマとなっています。
――具体的な対応策としては、どんな手を打たれたのですか。
松下 メンタルヘルス対策には、うつ病に罹った人をどうケアするかと、そもそも罹らないようにするための予防策の2つの方法があります。前者は、産業医を置いて罹患者の診療を行って適切なアドバイスを提示します。一般的には、外部の産業医と契約するケースが多いのですが、それだけでは不十分だと思います。あくまでも外部の方ですので、仕事の内容を深く理解した対応をしていただけるか不安があります。罹患者の治療だけでなく周囲の環境も含めた改善が必要な場合、やはり社内に専門家がいた方がいい。当社には、以前からカウンセラーが在籍しており、現在もカウンセリングルームとして専門の相談窓口を開設しています。一方、後者の予防策も重要です。いくら相談窓口があっても、罹患しないにこしたことはありません。また、私自身も以前からカウンセラーやスポーツマンのメンタルコーチを勤めており、メンタル・コントロールの大切さを実感しています。そのため、まずはうつ病にならないためのセルフケアの開発に取り掛かりました。
――メンタルヘルスケアは一筋縄ではいかないと聞きます。
松下 注意したのは、素人考えでやってはいけないということです。心の問題だけに、下手に対応をすると悪化する可能性もありますので、学術的に検証された手法を取り入れ、場合によっては専門家のアドバイスも受けながら、社内に専門知識を蓄積しました。これを現場にフィードバックしています。現在実施しているセルフケアのベースとなっているのは、「認知行動療法」というものです。これは、ある出来事に対する否定的な考え方に焦点をあて、その考え方の認知の方向性、気持ちを変えていく行動療法で、メンタルヘルス対策で広く知られています。セミナーでは、セルフケアに活かすために、これらの要素を取り入れ伝えています。