次に目指すべきは
コンシェルジュサービス
――さて、今回の新体制で副社長という要職に就任されたわけですが、ご自身のコールセンター現場オペレータからマネジメントの長い経験を踏まえ、改めて経営者としてコールセンターをみた時、位置づけと役割をどのように捉えていますか。
五月女 コールセンターの命題として、CS(顧客満足)向上と効率アップがよく取り上げられますが、私はこれらは既に当たり前のことで、ここで成果が出ているからといって、今さらトピックにはならないと思っています。これからのコールセンター、カスタマーセンターはもっと付加価値の高いサービスを目指すべきで、例えば、ホテルにおけるコンシェルジュサービスがこれに当たります。豊富な業務知識と経験があり、応対が一流であるばかりでなく、お客様の質問から一歩先を読んでアドバイスができるスペシャリストです。最近、私は当社のメンバーにも「高いサービス」という表現ではなく、「コンシェルジュ」を今後目指すべきサービスのキーワードとして用いています。お客様企業が分からないことに的確に応えるのは当たり前で、さらに「弥生のカスタマーセンターに電話をかけると、経営に役立つ情報、今後のヒントが得られる」と喜んでいただく、期待した以上に感動してもらえるサービスが、次に目指すコールセンターの姿だと思います。
五月女 お客様からの問い合わせのなかで最も多いのが税務・仕訳相談になりますが、現在は税務相談に関しては税理士法の独占業務の規定に抵触するとして、お答えすることは難しいのが現状です。しかし、一般仕訳相談に関しては一定の条件下でお客様からの相談に応じられる可能性が高いとして、現在税務当局にその最終確認を行っているところです。実現できるとなると、民間企業では初のサービス提供になりますのでお客様の期待に応えるうえでは大変重要な意味を持つと考えています。そのため、社内に有資格者の手配や簿記一級取得者などのチーム作りも同時に行っており、確認が取れ次第なるべく早くサービス提供できるよう準備を進めています。これも「弥生に電話すれば、こんなことも教えてもらえる」と感動していただける高付加価値サービスの一つだと考えています。
経営視点の指標は
CS、売り上げ貢献度とCPC
――経営に対するコールセンターの貢献度をいかに測るかも、よく問われるところですが、なにを指標とすべきでしょうか。
五月女 経営視点の指標としては、CS度、売り上げ貢献、そしてCPC(コスト・パー・コール)でしょうか。先ほど、CSはすでに当たり前と申しましたが、経営サイドの指標としてはやはり重要です。当社の場合、CS調査をEメールにより毎日実施しています。そしてホームページのトップに月間結果をユーザーの皆様にも公表しています。現在、満足・普通・不満足の3カテゴリーで、満足が90%強ですが、これを社内的な自己満足に終わらせず、お客様にも公開し、なおかつ、数値だけでなく、Eメールのフリー文で寄せられたお褒めの言葉、厳しいご意見・クレームなど、プラスとマイナスの代表的な声も掲載しています。
売り上げ貢献については、実際に全社売り上げの約25%を当カスタマーセンターで計上しています。インバウンド時の有償サポート加入促進、最新バージョンへの切り換え誘導に加え、アウトバウンドによる契約更新切れ後の有償サポート加入獲得によって直接売り上げに寄与し、社内で「カスタマーセンターなくして弥生のビジネスは成り立たない」と言わしめるほどに、有償サポート売り上げを下支えしています。私が入社(6年半前)した当時は、DMによる加入促進のみで、カスタマーセンターが積極的に取り組むことはありませんでしたが、インバウンドでの勧誘、そしてアウトバウンドのアクションをビジネスモデルとして組み入れたことで、当時の有償サポート7万ユーザーから倍増強の15万へと飛躍的に増えたのは、カスタマーセンターの貢献が非常に大きいと自負できる成果です。
もう1つはCPC。コール1件あたりの処理単価がいくらかは、経営上やはり重要指標としてみるべきだと考えます。CPCは限りなく低くなればいいというものではなく、逆に上昇傾向もよくありません。適正ラインをきちんと決め、そこをキープすることが大切なのは言うまでもありません。当社の場合は、大阪センターのキャパシティオーバーのため昨年、札幌センターを開設し大阪との2拠点運営体制にしました。大阪と比べ、オフィス賃料は約半分、人件費は約25%安く、とくに1人あたりの募集広告費は3分の1以下です。後はスケールメリットなので、規模が大きくなればなるほど効果が出てきます。業務時間やスタッフの待遇をドラスチックに変えることなくCPCを改善する方策の一つとして、地方展開は有効と言えるでしょう。
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